【Ken’s Room】小冊子発刊とその理由について
今日は、この度発刊しました「コロナで大切な人を亡くした方へ」という小冊子の内容と、その発刊までの経緯について書きたいと思います。
先行きの見えない不安の中で僕にできることは?
二度目の緊急事態宣言が発出され、先行きの見えない不安を抱えている人は、さらに多くなっています。新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方だけでなく、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために、それまでであれば、当たり前のようにできた病院での「お見舞い」や「看取り」を執り行うことができなくなり、多くの人が、声には出さなくても、この場面における「新しい生活様式」、ニューノーマルに、どうすることが良いのか正直わからないと感じているのが正直なところかもしれません。
もちろん、感染を広げない為に、そして、日々病気と立ち向かい奮闘している医療従事者や医療機関にこれ以上の負担を与え医療破綻をおこさないために、我慢をしなければならないことは、皆さん頭では理解をしていると思います。しかし、メディアから流れてくる情報を聞いても、どれが正しいことなのか、情報が溢れすぎていて判断できない人が増えているのではないでしょうか?
そんな中、僕にできることは何だろうと考えた時、特にこんな時期に大切な人を亡くした人に、本当に必要な情報を届けたいという思いが募り、「コロナで大切な人を亡くした方へ」という小冊子のスタイルでまとめ、皆様にお届けすることになりました。
僕自身も、多くの人と同じ状況だったのではないかと思います。メディアやSNS上に溢れていている噂や根拠のわからない情報ではなく、とにかく正確な情報、一時情報が欲しくて国内外の様々なところにコンタクトを取ったりしていました。
全米葬儀ディレクター協会(NFDA)代表からの声かけ
ある日、全米葬儀ディレクター協会(NFDA)が新型コロナウイルス感染症に関連したセミナーを開催することを知り、迷うことなく参加しました。そこには、以前から懇意にしている協会の代表であるクリスティーン・ペッパーさんも参加していて、オンライン上に僕の名前を見つけるとすぐ、「日本はどんな状況?」、「何か困っていることはない?」、「何か私たちにできることがあれば、遠慮せずに言って欲しい」というメッセージをくれました。
日本の何倍も大変な状況にあるはずなのに、なぜそこまでしてくれようとするのかと驚かされましたが、そのことよりも、僕自身だけでなく、日本で死別の前後に関わる全ての人に必要な情報を届けなければならないと言う思いの方が強かったので、「近々連絡をしますので、検討してください」と何をお願いするかも決めていないのにも関わらず、返事を送ったことを思い出します。
2020年4月7日、7都府県に対して緊急事態宣言が発出され、同月16日に全都道府県に拡大され、5月末まで継続されていたと思います。アメリカでは3月ごろから新型コロナウィルスがさらに感染拡大し、ニューヨークが感染拡大の震源地(エピセンター)と認定されるほど、感染者数も死亡者数も一気に増加しました。
3月19日にカリフォルニア州、23日にニューヨーク州で「ロックダウン」が開始され、一番遅かったジョージア州で4月3日に開始されました。新型コロナウイルス感染症に対して全ての州で取り組みをしていた頃で、5月6日には、アメリカにおける新型コロナウイルス感染症による死者数が7万人を突破する様な状況でした。医療崩壊、そしてそれに次いで、急速に増加するご遺体数に対処する上で、対処能力を超えて、葬儀崩壊を起こすのではないかと危惧されていた状況でした。
そんな頃、アメリカの全米葬儀ディレクター協会“National Funeral Directors Association(NFDA)“ は、ほぼ毎週新型コロナウイルス感染症の対策に関連したWebセミナーを開催していました。その内容は、感染症対策、グリーフサポート、コロナ禍における人材マネージメント、コロナ禍におけるSNS活用、ニューノーマルにおける葬儀のあり方など、開催されるセミナーの数は10講座を超えていました。
それだけでなく関連団体である”Funeral Service Foundation”から、僕の恩師であるアラン博士が携わった「GRIEVING ALONE & TOGETHER」という冊子が発刊されました。 コロナ禍において、新型コロナウイルス感染症で亡くなった方だけでなく、他の死因で亡くなられた方も、いつもなら提供される「支援」が提供されていないために、これまで以上にグリーフサポートを始めとする支援が必要なことに気づいた同団体が、必要な人のところに届く様に無料で配布する準備をしていたのです。
日本人総グリーフ状態、そして冊子発刊へ
新型コロナウイルス感染症が拡大し、実際に大切な人を喪った時に、どの様に遺された家族を支えれば良いか、コロナ禍におけるご遺族をどの様にグリーフサポートをすれば良いのかについてわかりやすくまとめられている冊子を読み、この様な情報は、日本でも必ず必要になると直感で感じました。
日本では、新型コロナウイルス感染症で亡くなる方が多くないので、現時点では、必要ないかもしれないけれど」、必要になった時に、必要な情報が届かないことによって、孤立して1人で苦しみに立ち向かわなければならないようなことは、避けなければいけないと考えました。そして、「何か私たちにできることがあれば、遠慮せずに言って欲しい」という、クリスティーン・ペッパーさんの言葉を思い出し、早速、僕は同団体に連絡し、日本語翻訳版作成並びに発行の許諾を取り付けたのです。
そうして実際に日本語版の発刊ができることになりましたが、どうしても、アメリカでは当たり前の情報や知識も、日本においてはまだまだ浸透していないことが多くあります。
さらに、文化や習慣、価値観の違いもあるので、アメリカ版の翻訳のままでは日本の状況と合わない部分が多く、また、日々コロナウィルスに対する情報も変化していくため、完成に至るまでには、色々な苦労や越えなければならない困難があって、再編集に半年ほどの時間がかかってしまいましたが、しっかりと日本に合ったものを完成させることができたと思います。
ウィルスの感染拡大という予期せぬ事態によって、今までの日常は失われてしまいました。
当たり前の日常を喪失してしまっているけれども、目に見えないことなので、自分では何を失ったのかよくわからず、わからないから気持ちを表に出せない人も多くいるように思います。
この状況は、日本人総グリーフ状態とも言えるでしょう。
そんな日本総グリーフ状態の中で、さらに死別を体験すると言うことは、今までの日常での死別とは大きく状況が違い、いくつもの喪失を同時に体験しているため、自分の心の傷と向き合うのは本当に大変なことだと思います。
そして、誰かに助けを求めることも、いつも以上に難しく感じていると思います。
そんな時に、この冊子をご友人に差し上げたり、お世話をしたご遺族にお渡しいただくことで、1人でも多くの必要な方に届けばいいなと思っています。
冊子は、A4サイズの12ページになり、無料でeBookを閲覧したり、PDFをダウンロードできます。
下記専用サイトをご覧の上、お申込みください。
https://covid19-guidebook.griefsupport.or.jp
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