グリーフサポートを仕事に活かすと言うことについて、以前[きよみのみかた-9]の中で葬儀をテーマにお伝えしましたが、第12回目の今日は、グリーフサポートを軸に(又はベースに)サービスを考えることについて、お話ししたいと思います。
グリーフサポートをサービスに取り入れるということは、どういうことなのか。
それは、サービスの底辺にグリーフサポートの考え方がある、言い換えれば、そのサービスを提供する根拠(なぜそのサービスを提供するのか)がグリーフサポートの考え方に基づいていると言うことです。
例えば、ジーエスアイではグリーフサポートセミナーを主とする事業の他にもエンバーミング事業を行っていますが、なぜジーエスアイがエンバーミングというサービスを提供しているのかという理由です。
大切な人を亡くしたとき、その深い悲しみと折り合いをつけていくためには、まずは死別の現実を受け入れる必要があります。このニーズを満たさない限り、どんなに話を聞いてもらっても、寄り添ってくれる誰かがいたとしても、グリーフの状態から離れることはできません。
しかしながら、大切な人の死別を受け入れることは、その人が「死んでしまった」と言うことを認めることになりますので、なかなかすぐにできることではなく、できることなら避けて通りたいという気持ちがはたらくものです。
そんな「生と死のはざまのタイミング」で執り行うのが葬儀式です。葬儀は生への執着を手放し、死を受け入れるための儀式だと思います。
生への執着を手放すためには、それなりに時間が必要です。必要な時間は、人ぞれぞれ違うものです。同じ家族でも違います。
エンバーミングは、ご遺体の変化を止めて腐敗が進まないようにし、生前の面影をそのままに、最後のお別れ時間を作ることができる、優れた技術だと思います。
ですからジーエスアイは、ご遺族が、目の前にいる今にも目を覚ましそうな大切な人に対して、最後の言葉をかけたり、身体に触ったり、家族と思い出を語り合うと言った、大事なお別れの時間を必要なだけとってもらい、その後、いよいよ覚悟を決めて死を受け入れるための儀式に臨む、という一連の体験をする安心安全な場と時間を作る技術だと、エンバーミングを捉えて提供しているのです。
このように考えると、今回関西エンディング産業展で登壇する、新潟の葬儀社、山内葬祭の山内誠一さんのセミナーは、葬儀に関わる全てのサービスを、ご遺族に対するグリーフサポートと捉え直して提供してきたノウハウが満載のセミナーです。
立地上、たまたま山内葬祭の周りにはお花屋さんがなかったことから、仏壇にお供えするお花を販売しようと、「花市」(現在の山内まるしぇ)を始めたのですが、このイベントを単なる花を売る目的とするのではなく、地域でお世話をしてきた方々のお話しを聴く場として捉え直して、スタッフのみんながご来場くださった方と意識的にコミュニケーションをとるように変えてきました。
それによって、無理に勧誘をしなくてもお客様が会員になりたいと、自ら申し出てくれるようになったと言います。
現在、山内葬祭は、5つの施設を保有していますが、燕三条駅に近いリビング型の施設は、今流行りの小規模の家族葬向け施設の先駆けです。
特に、下の画像の施設は、正面から見たらカフェにしか見えないのですが、裏側に葬儀施設を併せ持っています。
このような家族葬施設は、家族だけでお金をかけずに行う葬儀のための施設というイメージが強くあると思います。しかし、山内葬祭ではこれらの施設でも単価が高く、場合によっては、葬儀後にもう1日宿泊したり、参列者が多いこともしょっちゅうだと言います。
消費者であるご遺族は、別に安いことだけが大事なわけではありません。
単に葬儀に価値を見いだしていないだけなのです。
打ち合わせもグリーフサポートの見方で捉えれば、このように話を聞かせていただくことによって、悲しみを受け止めて共有する、つまり、カウンセリングと同じくらいの効果が出るものです。
[きよみのみかた-9]でもお話ししましたが、亡くなった大切な人との思い出を、打ち合わせの中で担当者と分かち合うことで、故人のためにどんな葬儀をあげたら良いか頭に浮かんで来るようになり、結果として単価もUPしていくようになるのです。
こうした様々なサービスの裏側にグリーフサポートとしての仕掛けが隠れているものは、グリーフサポートを軸にしたサービスと言えるのです。
関西エンディング産業展の山内誠一さんのセミナーでは、他の事例もお話しくださる予定です。
グリーフサポートを軸にしたサービスのノウハウがたくさん聞けると思いますので、ぜひ、足を運んでいただけたら嬉しいです。
書いた人:橋爪清美