こんばんは、そして、こんにちは。
ジーエスアイのグリーフカウンセラー、筒井英恵です。
とうとう2016年も12月に入り、年末となりました。
10月末のハロウィンの飾り付けが終わるやいなや、街の雰囲気には、いよいよ年末といった雰囲気が漂ってきて、イルミネーションが輝き、そのうち11月のうちにクリスマスそしてお正月の飾りものがお店に並ぶので、いやがおうでも「師走」気分になりますね。
【賑やかな時期だからこそ】
街の喧騒や師走の忙しさの中で忘れてしまいがちなことがあります。この時期は、グリーフサポートの携わる人は、喪失体験をした方たちを気かけることが大事な時期なのです。
大切な人を亡くした人にとって、街の賑やかさや明るさとは反対に、普段以上に寂しさを感じ、つらい気持ちになることがあります。
家族や恋人のためのイベントが多い時期だからこそ、一緒に居るはずの人がいないことを実感させられる、そういった時期です。
一緒に居るはずだった人がいない、ということを、たとえば夫婦や親子が揃って笑顔で過ごしている姿を目にして、改めて「突きつけられる」ような感じがするのかもしれません。
季節ごとのイベントだけでなく、誕生日や命日、思い出のある日の前後など、故人をより強く思い起こさせるような時期に喪失感を心や身体で強く感じることを、グリーフの分野では「記念日反応」や「記念日現象」と呼んでいます。
「記念日反応」については、Facebookページ”大切な人を亡くしたとき”でもお話ししています。
https://www.facebook.com/guriefsupport.griefcare/
記念日反応について (2016.11.2投稿)
例えば、冬について言えば、亡くなったのが年末年始の時期だったり、寒い日だったという場合、街のイルミネーションの明るさを目で感じた瞬間や、空気の冷たさを肌で感じた瞬間にその時の感覚が呼び戻される、ということがあるかもしれません。
そうした反応がとても強く出てしまうときの現象を「グリーフアタック」や「フラッシュバック」と呼ぶこともあるのですが、その名の通り、発作のように、何気ないことが引き金となって、突如として湧き上がる感情や、溢れて止まらない涙に圧倒されてしまうことすらあります。
悲しみや寂しさ以外にも、「なぜいないんだ」「なんで自分が」という疑問や、怒りの感情が湧いてきて、叫び出したいようなことだって、当然あると思います。
喪失からその時まで感情にフタをしてしまっていた場合、溢れ出す感情の強さはとても強く出る可能性もあります。
このようなグリーフアタックは、ご遺族にとってとても辛く苦しい体験ですが、それはつまり、亡くなった人のことを心でも身体でもとても強く思い出している体験です。
ですから、「グリーフアタック」を「思い出体験」という言葉で言い換えてみると、その恐怖感を和らげることができるかもしれない、とグリーフサポートセミナーではお伝えしています。
http://lab.griefsupport.co.jp/seminar/
サポートする側の人でも、突然の感情の起伏に接した時には、焦ってしまったり困惑してしまうかもしれませんが、まずは、大きく息をして、地面に触れている足の感覚を確かめながら落ち着くこと、その人に「大丈夫だよ」と声をかけることから、始めてみてください。
そして、「それは記念日反応・思い出体験かもしれない」と伝えて、話をじっくり聞く時間と場所を設けることが、その人のサポートになるかもしれません。
【体調、崩していませんか?】
記念日反応は、気持ちの変動だけではなく、体調に出ることもあります。
病気ではないのに、なぜか元気がない、動けない、ということや、風邪のような症状が出るということも。
生活に影響が出るくらいに、眠れない、寝すぎてしまう、ぼーっとしてしまう、食が進まない、または食べすぎてしまうといったこともありえます。
故人がご病気だった場合、ご遺族がその病気の症状と似たものを感じている場合もあります。
こうした「いつもと違う」状態になってしまった時に、ご自身もその周りの人も当惑してしまうことがあります。
そういうときにもやはり、「記念日反応なのかもしれない」と、「ちょっと立ち止まってみて、ご自身にとってどんな時期かを振り返ってみてはどうでしょうか」と、声をかけてみてください。
もしその時期が毎年似ているようならば、大切な人のことを身体で思い出している時期、とも言えるかもしれません。
ご遺族には、その時期が来たら周りの人に「今はどうやら私にとってしんどい時期みたい」と伝えてもらうことで、無理をすることなく、サポートを得やすくなると思います。
そこから、大切な人の死を自分らしく受け容れてゆく”グリーフワーク”として大切な時間である、「故人との思い出を語り合う時間」を作る、良いきっかけにもなるかもしれません。
では大切な人を亡くしてから時間が経てばそういった反応が減っていくのか、というと、必ずしもそうではありません。
ずっと泣けなかったのに何年も経ってから急に涙が出てくるようになる人、理由がわからず急に体調が優れなくなる人もおられます。
こんなに時間が経ったのに、とショックを受けるご遺族もいるかもしれませんが、「時間の経過とともになくなるというわけではなく、いつ出てきたとしても、それもごく自然な反応ですよ。」と伝えることができるといいですね。
ご遺族をサポートする中で、その人の変化そしてそのタイミングに気づくこと、それに気づいたことを伝えることが、ご遺族にとって大きな支えになるはずです。
ですので、出来る限り長い期間、見守る気持ちを持って関わっていかれることが望ましいのですが、たとえ短期間にしか関われないとしても、
その間にグリーフの反応を知識としてご遺族に伝えることができていれば、その先ご遺族が自分自身で「これは大切な人を想う中で当然の反応なのだ」と思えるような安心感を持って、記念日反応を受け止めてもらえるのではないかと思います。
【癒やしの時間を】
亡くなった方への想いや思い出を語ることを上で例に挙げましたが、気持ちや身体の調子がすぐれない時には、心地よいと感じる場所でしっかり休養をとって、美味しい食事で体をいたわるように心がけてもらってください。
年末年始になるとどうしてもせわしなくなってしまうので、ゆっくりするのは難しいかもしれませんが、日々の食事の時間やお風呂の時間に、リラックスする工夫をすこし取り入れてみるだけでも、構わないと思います。
たとえば大切な人の好きだった食べ物を使ったお料理を、安心できる人と一緒に思い出を語りながら食べる時間を持つ、というのも、おすすめです。
大切な人との思い出を大切にするとともに、ご自身を大切にする時間を持っていただければ、と思います。
【ホリデーサポートグループ】
ジーエスアイでは毎年、大切な人を思い返す時期である12月に「ホリデーサポートグループ」(分かち合いの会)を開催しています。
死別体験をした方に向けて、普段人にはなかなか言うことができない自分の気持ちを話したり、又は同じような境遇にいる方の話を聴くことができる時間です。
?
下記の3つのことを通じて、参加者の皆さんが、今の自分の身に起きていることが自然なことで、「おかしくなったわけじゃない」と少しでも感じられる時間を過ごしていただきたいと思っています。
?
①大切な人との死別によって、心がどんな状態になっているのかについて知ること。
②参加している人に、自分の話をすることによって、自分の心や気持ちを整理すること。
③他の参加者の話を聴くことによって、自分との違いや共通点を見つけ、自分への理解を深めること。
ジーエスアイのホリデーサポートグループは、誰にもわかってもらえないと言う、孤独感を感じることなく、自分らしく過ごすことができる場所です。
また自分がどんな感情表現をしたとしても、意見を押し付けられたり、先入観や偏見を持たずに受け止めてもらうことができ、自分のことを否定されることもありません。
そして、参加者が互いに「気づきを与えたり受けたり」をすることによって、痛みと向き合う勇気をもらうことができ、湧き上がる感情の扱い方を学ぶ機会となります。
誰かに自分の気持ちを理解してもらえた、受け止めてもらえたという体験によって、自分自身に対する共感や 優しさを持てるようにもなります。また、他人を信頼し、相手にも信頼される経験を通じて、悲しみと折り合いをつけていくきっかけを掴むことができるのです。
もしあなたのそばに気にかかるひとがいらしたら、ぜひお誘いください。?
詳しくは、ジーエスアイホームページをご覧ください。
http://www.griefsupport.co.jp/taisetsunahito/holiday.html
全国各地で、早くもインフルエンザが流行中とのこと。グリーフを感じているときは特に、免疫が落ちやすいときでもあります。
しっかりと栄養と睡眠をとって、どうかくれぐれも、ご自身の心と身体を大切になさってくださいね。
【過去記事】
グリーフサポートと”家族” ~おはなのオハナし~?