ひょんなご縁で、この映画の感想を書かせていただくことになりました。
仕事柄、映画やドラマを観る時は、グリーフサポートの視点、つまり大切な人やモノをなくした時、その喪失をどう受け入れていくか、あるいは周囲の人がどう支えるのか、といった視点で見てしまいます。
今回は映画「終わりの鳥」を「きよみのみかた」で観た感想をお伝えしたいと思います。

この映画は、闘病の末、若くして死を目前にした少女チューズデイとその母親、そして、死を告げに来る「終わりの鳥」デスの3人(いや2人と1羽…)のお話。
予告編を見たときは、「終わりの鳥」デスのヴィジュアルがちょっと怖くて、どんな話なのか全く予測がつきませんでしたが、本編は母と娘と「終わりの鳥」がそれぞれの苦しみと向き合いながらも「死」を受け入れていくプロセスを独特なヴィジュアルで、深い優しさをもって描いている映画でした。
「終わりの鳥」がチューズデーに死を告げると、穏やかだった日常が大きく動き出します。話が進んでいくと三者三様の立場で「死」を受け入れていきますが、特に母親は、全力で拒否したり、見ない振りしたり、葛藤しながら向き合って、もがいている姿がコミカルな中にも丁寧さが感じられる描き方をされているなと感じました。
チューズデー、母親、終わりの鳥の三者それぞれが自分の立場で苦しんではいますが、実は相互に支えあっていて、その部分をユーモアを交えながら、「生きること」「死ぬこと」についても深刻にならずに、観ている人に考えさせる描き方をしていると思います。
しかし、いよいよ最後の時を迎えていくプロセスは、さすがに観ていて本当に苦しく耐えがたいものでしたが、同時に互いに対する深い愛情も感じました。
「死を受け入れること」は、本人は死に向かっていく恐怖と闘い、支える側はその人を支えながら、自分も恐怖と不安と闘っていきます。
そして、亡くなった後は、大切な人がいなくなった世界で生きていくために新たな恐怖と不安と闘いながら、現実を受け入れていかなくてはなりません。だからこそ、だれかがそばにいて寄り添ってくれる必要があるのだと思います。
「終わりの鳥」デスは、死を告げる鳥ですが、同時に大切な存在を亡くす人を支える存在でもありました。大切な存在を亡くす人は、「死」を迎える人を支えていた人であり、ご遺族でもあります。
同じ支える人でも、ご遺族は大切な人の死に対する恐怖や苦しさ、さびしさ、他にも多くの言葉で表現し切れないような感情を抱えている状態です。
私たちグリーフサポートに携わる人は、その感情を整理して折り合いをつけて、大切な人がいない人生を生きていくプロセスを支えていかなくてはなりません。
その人の前に出て引っ張っていくのでもなく、後ろから押すのでもなく、その人のペースに合わせて共に歩くような感覚です。「終わりの鳥」は、チューズデーに対して厳しく死を告げましたが、一方で優しさを持ってその時を待っていてくれました。母親に対しても死神として沢山の死別を見てきたからか、母親の気持ちを理解してチューズデーの死後もそばに来てくれました。
これから観る人のためにネタバレしないよう、内容は多くは書けないのが残念ですが、この映画は、「死」の現実を受け入れていくプロセスを描きながら、支えるスタンスの一つの形を教えてくれていると感じます。「終わりの鳥」は死を告げる鳥らしい、素敵なグリーフサポートバディでした。
そんなことを踏まえてこの映画を観ていただくと、大切な人を亡くした誰かを支えるスタンスのヒントが見えてくると思います。
映画『終わりの鳥』4/4(金)より全国公開中
(書いた人:橋爪清美)
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【プロフィール】橋爪清美

(株)ジーエスアイ 代表取締役副社長
(一社)グリーフサポート研究所 認定資格 グリーフサポートバディ
(一社)グリーフサポート研究所 認定グリーフカウンセラー
1965年、東京生まれ。音楽スタジオの老舗、音響ハウス株式会社に営業として就職。その後ぴあ株式会社に転職し、チケット流通業にて15年間、音楽エンターテイメント業界で働く。2004年に退職し、公私共にパートナーである社長の橋爪謙一郎と有限会社ジーエスアイ(現、株式会社)を設立。
アラン・D・ウォルフェルト博士の理論を、博士の教え子である橋爪謙一郎から学ぶ。2009年から死別に携わる仕事を通じて遺族支援を担う人材育成のための「グリーフサポートセミナー」を橋爪謙一郎と共に立ち上げ、さらに2012年には認定資格「グリーフサポートバディ」を創設する。
現在は、経営者として働く傍ら、グリーフサポートセミナー[ベーシックコース]の講師、グリーフサポートバディの育成、ご遺族のグリーフカウンセリングやサポートの相談を行っている。
ブログ: きよみのみかた https://lab.griefsupport.co.jp/category/staffblog/kiyominomikata/