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第1回目は、NFDA(全米フューネラルディレクター協会)が発行している、アメリカの葬祭ディレクター向けの雑誌 ”The DERECTOR” 2015年12月号より、橋爪謙一郎の恩師、アラン D.ウォルフェルト氏の記事をご紹介します。
この季節は年間を通しても、お亡くなりになる方が多く、葬祭業で働く方たちは毎日忙しい時期です。そんな時こそ、パフォーマンスをあげるために、自分自身のケアが大切なのは、アメリカでも日本でも同じことのようです。
あなたにとって、「仕事」と「生活」どちらが先ですか?
by Alan D. Wolfelt
私が教える葬祭サービス従事者のための“セルフケアのワークショップ”でのこと。葬祭ディレクターの友人が私に言いました。「人々のためでなければ、葬儀の仕事は素晴らしいんだけどね。」
そうなのです。私の友人は燃え尽きて、自分自身の仕事としての葬祭サービスの未来について疑問を抱くようになりました。彼は自分の家族との関係性を無視してしまった結果、家族や友人とのつながりや一体感を感じられないと言っているのです。
自分を支えてくれる人は、誰にとっても必要です。もちろん葬祭ディレクターにとっても同じです。
友達や、家族とのプライベートな時間を持つための余裕は、充実した人生に活力を与えてくれます。多くの葬祭ディレクターは、誰かに支援を受けるよりも支援を与えるほうが得意でしょう。しかし、自分自身の個人としての人間関係を無視していると、ついにはフラストレーションがたまり、孤独や抑うつを感じることになるのです。
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あなたが支援するご遺族の要求に注力することは大切なことです。
しかし、私の友人が「自分のことがわからなくなった。自分が何か動き回っているだけで、私が彼らに対して心ここにあらずだと言うのに気付いていると思う。私は友人との時間も家族との時間もない、そして自分の時間もないんだよ」と言い続けているように、あなたは自分自身への関心を失う危険性をはらんでいると言えるのです。
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普段、この葬祭ディレクターはサポートにおいては申し分なく、彼が支えるご遺族の力になっています。彼は私が呼ぶところの「natural nurturer(天性の癒し系)」ですが、
とても興味深いことに、彼のような天性の癒し系は、常日頃、相手と親密な関係性を築く必要があるし、自分に栄養を与えると共に、自分自身のケアが必要であるのは言うまでもありません。また天性の癒し系の人は、人々が無意識のうちに持っている要求を、感じ取ってその人々に与えています。
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休みなく、自分のケアをせず、多くのものを他人に与え、他人の世話を焼きすぎると、優秀な葬祭ディレクターは燃え尽きてしまうのです。与えることと受け取ることの自分なりのバランスを発見することは、シーソーのバランスを取るようなものです。与えすぎ、働きすぎてしまうという失敗から学ぶことがあるのです。
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●葬祭ディレクターには心を許せる誰かや、自分を支えてくれる誰かが必要
葬祭サービスの需要は、既に顧客に充分な時間を費やしていると感じている葬祭ディレクターたちを放置していることにつながります。もう自分にはどんなエネルギーも残っていない、たとえば、家族との時間を過ごしたり、友人と交流する時間もないのです。しかし、与えることと受け取ることのバランスをとることを学び、自分自身が生きる喜びを味わうためには、よき人間関係が必要なのです。
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家族や友人との関係は、多くの人が支えや親密さを求めたいという欲求を満たすために探し求めているものです。しかしながら、多くの葬祭ディレクターは、自分たちが孤独で家族や友人から孤立していると訴えます。これは「Red Flag」と言う症状、つまりディレクターが仕事に時間を使いすぎ、家庭での時間がないと、赤旗を挙げている状態なのです。もしこの症状があなたの身に覚えがあるならば、人に支えを提供したら、自分も受け取るようにするか、あなたの人生において続いている人間関係をさらに深めると言った新しい方法で、自分の心を開く必要がある時なのです。
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多くの孤独や孤立に悩んでいる葬祭ディレクターは、ご遺族に過剰に関わりすぎであり、「無理な状態であること」や「できない」と言うことができずに苦しんでいます。矛盾しているのは、あなたが仕事に自分を捧げれば捧げるほど、家族や友人からますます距離を感じるということです。時間を取り、自分自身にエネルギーを与え、自分の内側に耳を澄まし、自分を、そして、自分が愛するものを大事にすることには価値があります。他人に与えることのできる尽きせぬ泉が自分にあるかのようなふりをやめる必要があります。
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多くの葬祭ディレクターは「仕事がいつだって第一。自分のためではなく、助けを求めているご遺族のために働きなさい。」と、
ぶつぶつ、つぶやきを繰り返す、仕事のテープを心の中に持っています。もしこの状態を持ち続けてしまえば、外見はうまく取り繕うことができたとしても、自分の内面を見つめる機会を失うことでしょう。
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自分自身をケアすること、あなたの家族と友人をケアすることは自分を大切にするために不可欠な要素です。あなたが人生の取り組みに対して過度に深刻になるのではなく、笑って、楽しんで、もっと遊んで、あなたの人生で喜びを育む意識的な選択をする時なのかもしれません。
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●セルフケアのための5つの要素
以下の要素は、あなたが今日からできるセルフケアの5つの要素です。
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1.過剰に関わらない、出し惜しみをしない
仕事をはじめとする様々な活動をすることや約束することによって、あなたの人生はコントロールされてしまいます。
「成功するために、やらなければならない…」と心の中で、葬祭ディレクターの仕事のテープが語り続けていれば、あなたが仕事にのめり込むことに溺れるリスクが高まります。「できない」と言うことを学ぶのはよい考えであるだけでなく、必要なことなのです。何かをやめることは、何かを始めることより難しいことを認識しましょう。過剰に仕事にのめり込むことは、かえって、思ったように仕事の成果が上がらないという結果に終わります。
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おそらく、仕事を少なくすれば、自分のやるべきことにじっくり集中でき、自分の時間を犠牲にしている後悔を感じずに済みます。ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(James Abbott McNeill Whistler/アメリカ人画家)は絵画における成功の秘密について「キャンバスに描かないものは何かを見分けることだ」と言いました。それと同じ様に、あなたが賢く働く能力は、自分が何をしないか見極めることにかかっています。
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2.自分の「プライムタイム」を利用しましょう。
あなたにとって「プライムタイム」を大事にすることです。それは1日のうちの、どんな仕事を与えられても一番パフォーマンスが発揮できる時間帯のことです。とはいえ、いつもその時間を葬儀の仕事に割けるわけではありませんが、あなたはより少ない努力でよりよい成果を出すことができます。たとえば、あなたが朝型人間であれば、できるだけ打ち合わせは午前中に設定します。逆に、午前中はそれほど人に会いたくないのであれば、打ち合わせは午後に設定します。
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3.上手に人に仕事を頼むことを覚えましょう。
ご存知のように、あなたが担当するご遺族にとって価値のある葬儀を提供するには、たくさんの細かな業務があります。他の人にやってほしい、またはやってもらう必要がある仕事を割り振ることは、必要な要素であり、学ぶことのできるスキルです。会社のなかで、適任な人物に仕事を与えなさい。仕事をする人がそのスキルを持っているか、やり方を知っているか確認しなさい。(たとえば、葬祭ディレクターの中にはご遺体の処置の才能がある人がいます。一方でどれだけご遺体の処置に時間を使っていても、満足な仕事ができない人もいます)。上手に人に仕事を任せるスキルがあなたの時間を創り出し、最も大事な仕事をする時間を与えてくれます。そしてあなた自身をリフレッシュする時間を与えてくれます。
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4.遊ぶ時間を創り出しましょう。
仕事で大きなストレスがあればあるほど、遊びの時間を創り出すことが必要です。常に強制的に仕事をしていると、仕事のパフォーマンスが低くなります。遊びの時間はあなたを活性化させ、本当の成功のための必要なバランスをもたらします。もっとも成功した人々は、仕事より、はるかに多くの時間を人生のために使っているのです。
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5.時には、デジタルデトックスに取り組みましょう。
しばしば、テクノロジーは私たちの「時間がない!」の原因でもあることを心にとめてください。携帯電話や電子メール、テレビやインターネットを丸1日、または週末、もしくは1週間やめてみましょう。これらの無意識のうちに費やしている数十分間(もしくは数時間)を使って、毎日、私たちは何をすることができたでしょうか?
もし、この記事の考えにあなたがハッとしたなら、すぐに行動してください。家族や友人ともっと関わることを今すぐ決断することができます。あなたは今、セルフケアのための5つのステップを踏むことができるのです。もしあなたが、「仕事が多すぎる」「家族のために時間が取れない」「NOと言えない」と言った堂々巡りの中にいるのであれば、自分をいたわり、専門のカウンセラーを見つけてください。助けを求めることは、あなたが弱いからではありません。それどころか、人生の楽しみを再発見し、あなた自身の価値、家族や友人の価値を再び確認したいと願うことなのです。
アラン・D・ウォルフェルト(アメリカ人):心理学博士・作家・教育者・グリーフカウンセラー
Center for Loss and Life Transition創設者(アメリカ・コロラド州)
(株)ジーエスアイ 代表取締役 橋爪謙一郎の師匠であり、株式会社ジーエスアイで提供しているグリーフサポートセミナーは、ウォルフェルト博士の提唱する理論をベースに日本人の考え方や文化、習慣に合わせて、カリキュラムが作られています。
ウォルフェルト博士は、グリーフにある人々を「“治療”ではなく“支える“、本人が悲しみと折り合いをつける」というコンパニオンモデルの創造者で、毎年ホスピス、病院、学校、大学、葬儀社、地域社会団体、そして様々な組織コミュニティのメンバー、地域の専門家、スタッフへのグリーフについての教育を提供しています。また、アメリカ・コロラド州にあるCenter for Loss and Life Transitionにおいて、死別のグリーフにある人を支える人のためのセミナーを行っています。人気のあるコースは、グリーフカウンセリングでの長年の経験や彼の情熱の集大成です。現在、彼はグリーフにある人たちを孤立させないようにすることを教えることに焦点を当てています。
また彼は、グリーフにある人、喪失体験者を支えたい人に役立つ多くの書籍の著者でもあります。毎年北米で行っている「Death Education(死の教育)」ワークショップにおいて、「有意義な葬儀を経験することの価値」について提唱しており、一般市民や葬祭ディレクターに対し、葬儀の価値について教育する年2回のセミナーを提供しています。