4月30日、5月2日・3日の3日間、ジーエスアイにてグリーフサポートバディ認定試験が行われました。
今年は23名が受験し、これで認定されたグリーフサポートバディは105名となりました。
(上記の日本地図は昨年度第6期生まで82名の分布図です。)
資格を創設してから、まずは100名育成することを目指してきましたが、実は100名になるなんて、まだまだ先だと思っていましたので、6年で達成できたことは本当に嬉しく思っています。
そして今は、一つのステージが終わり、早くも次の段階に入り進化する時がやってきたのだと言う気持ちでいっぱいです。
ということで、今回の「きよみのみかた」は、ジーエスアイの認定資格である、グリーフサポートバディについて、お話ししたいと思います。
第1回認定試験は、2012年、東日本大震災から約1年後であるこの年に初めて行われました。そして、なぜこのグリーフサポートバディが生まれたのかと言う理由はここにあります。
今から7年前、2011年の3月に未曽有の大災害、東日本大震災が発生しました。
当時のジーエスアイは、社員もエンバーマーが1人と言う時期でしたし、グリーフサポートセミナーを始めてからまだ2年足らずでしたので、被災地に出向いてサポートができるには程遠い状態で、自分たちには何の力もなく、企業として何もできないことに対して本当に悔しい思いをしたことは、今でも忘れることができません。
この大災害で本当に多くの方が亡くなられました。
遺された人たちに対する心のケアについては、阪神淡路大震災の時と比較をすると、比べ物にならないほど広範囲で行なわれているようにメディアを通じて報じられていました。
しかしながら、短期間の「傾聴講座」などを受けただけで、被災地でご遺族の話しを聞き、気持を分かち合うボランティアなどの活動をしていた一部の人達が、二次的な被害を引き起こしているという事例も、多く報道されていました。
二次的な被害とは、本来ならば長期的に他者からの支援が必要な人たちが、初期段階で傷つけられ、その経験から継続的なカウンセリングなどを拒否する人たちが現れたというものです。
一方、その支援のために現地を訪れた人の中には、現地の状況の悲惨さに自分も深い傷を負ってしまったり、ご遺族の人が抱えている悲しみを抱え込み、燃え尽きてしまったりする人も多く存在していました。
実際にグリーフサポートが必要とされるのは、震災直後と言うよりも、時間が経って支援者の数が減ってからです。なぜならば、まずは自分達の生命を脅かすような要因、つまりは衣食住といった、人が生きていくために最低限必要なことがある程度満たさるようになるまでは、心のことに目を向けることができないからです。
また、日本では阪神淡路大震災の後、様々な災害が起きる度に、グリーフケアの必要性が叫ばれるようにはなりましたが、東日本大震災が起きた2011年でも、ご遺族や死別体験者にとって「安全で安心できる場」を作ることができる、真のグリーフサポートの担い手が足りているとは言えず、グリーフサポートの担い手を育成していくことが最重要課題となっていました。
そんな状況がわかってくるにつれて、私たちにもできることがあると思えるようになりました。
この先必要となってくるグリーフサポートの担い手を育成し、さらにその人たちが1人単独でサポートをするのではなく、互いに連携し、支え合いながら、継続的に支援を提供できるネットワークを構築していけば、私たちジーエスアイと言う一企業だけで支援を提供するよりも、もっと高範囲で質の高い支援が可能になると思ったのです。
そこで、グリーフサポートの中にある本質を理解してもらうことによって、震災に対する支援ということに限らず、様々な死別において必要とされる場面で活躍できる人材を増やすために、認定資格を創設しようという思いに至ったのです。
認定試験を行うにあたっては、審査官の選定からどんな試験を行ったら良いか、そして、認定する資格の名前に至るまでを必死に考え、試行錯誤を繰り返しました。
グリーフサポートセミナーで学ぶ、サポートに必要な3つの柱である、”サポートマインド”、”グリーフの知識とコミュニケーションスキル”、そして”セルフケア”をバランスよく身につけ、死別体験者に安心安全な場を提供できる人として証明するには、単に知識の試験を行ったところでわかるものではないでしょう。
また、お金を払えば資格をもらえたり、継続できるような仕組みでは、私たちジーエスアイだけでなく、共にネットワークを組んで活動していくにあたって、同じ方向を目指して切磋琢磨することができる人材を継続して確保することもできないと考えました。
そしてできあがった認定試験の仕組みは、
①毎年課題となるテーマについて書く、3,000字程度の論文
②プロフェッショナルコースにて行った実習について考察したことをまとめる、15分程度のプレゼン
③審査官による10分程度の面接
これを各試験100点満点として、その7割となる210点以上を合格として認定するものとしました。
また、その後の更新には、必ず更新に必要なカリキュラムを学ぶことによって更新を認めることとしました。それは、様々な理由でグリーフに苦しむご遺族を支えるためには、変化する社会に対応しながらサポートを提供する必要があるからです。
そして、資格には「グリーフサポートバディ®」と言う名前をつけました。
なぜ、バディと言う言葉を選んだのかと言うと、
まず、英語の”buddy”という言葉には、“仲間”や“相棒”という意味があります。
ダイビングにおいて常に二人が組になって事故を防ぎ、互いに助け合いながら行動する人のことや、海外留学生が現地の生活に慣れるまで、相談に乗ったり毎日を楽しく有意義に過ごせるようにサポートをする人を「バディ」と呼んでいたりします。
死別を体験した人が、グリーフの旅を1人で進むのは辛くて心細いことです。
だからこそ、そばにいて勇気を与えることができる人材であって欲しいという思いをこの名前に込めています。
また、カウンセリングの効果には以下の3つがあります。
【カウンセリングの効果】
① バディ効果:気持ちや考えを理解し共感する
② カタルシス効果:心の中によどんでいるものを洗い流してさっぱりさせる
③ ウェルネス効果:本当の自分らしさに気づく
このうちのバディ効果というものは、グリーフサポートの基礎にもなっている、「共感すること」を指しています。
色んな感情が交錯する状況で、ご遺族が気持ちを整理していくには、誰かにとことん話しを聴いてもらい、気持ちに共感してもらう必要があります。
資格認定された人たちには、自分の考えを押し付けたり相手を評価せずに、グリーフの状態にある人たちの気持ちを受け入れ、共感することができるプロフェッショナルであることを忘れずにいて欲しいという思いも込めているのです。
こうして、試験方法と資格の名前は決まり、この資格に合った人材かどうかを判断する審査官には、心理職の立場、学習における探究心と言う観点、プロとしてのビジネスの視点から判断していただく方々にお願いすることができ、なんとか認定試験までこぎつけることができました。
当時のグリーフサポートセミナーは、基礎を学ぶベーシックコースに続き、実践する人のための上位コースとしてアドバンスコースを始めたばかりでした。
しかし、それではまだまだ様々なグリーフにある方を支えるには足りないと考え、一般的にサポートが難しいとされるグリーフのケースを学び、プロとしてどんなご遺族に対してもサポートができるようにするためのプロフェッショナルコースを創設しました。
2012年の1月から始まった、そのプロフェッショナルコースにはこれまでベーシックからアドバンスと学んできた16人が受講し、その1期生が認定試験を受験しました。
そして、その年の4月29日、ジーエスアイ認定、グリーフサポートバディ第1期生16名が誕生したのでした。
ここまで、グリーフサポートバディが誕生した経緯と、この資格に対する思いをお伝えしてきました。こうして振り返るだけでもいろんなことがあったなぁ、と感慨深い気持ちになります。
では、グリーフサポートバディになると何ができるのか?
グリーフサポートバディはどんな人材なのか、ということについては、次回の「きよみのみかた」でお話ししたいと思います。
ぜひぜひ、次回も楽しみにしていただけると、嬉しいです。
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※来年度の第8回グリーフサポートバディ認定試験は、2019年の4月末に行われる予定です。
2019年1月から始まるプロフェッショナルコース第8期を修了した方が認定試験を受けることができます。
今からベーシックコースを受講し、秋のアドバンスコースを受講いただければ、最短でグリーフサポートバディになることが可能です。
◆グリーフサポートセミナー ベーシックコースについてはこちらをご覧ください。
http://www.griefsupport.co.jp/griefsupport/seminar/seminar-course.html#p1
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(書いた人:橋爪清美)