エンディングソーシャルワーカーとして最期の準備(逝きる)を支えたい。

エンディングソーシャルワーカーとして最期の準備(逝きる)を支えたい。

今回、ご紹介するグリーフサポートバディは、人生のエンディングに関するスペシャリスト、川上恵美子さんです。

川上さんは、岡山県でご主人と家族葬専門葬儀社を経営されており、上級終活カウンセラー、シニアライフマネジャー1級とさまざまな資格をお持ちです。
この春には、社会福祉士も取得されました。

葬儀社としての仕事の他に、(一社)おかやまスマイルライフ協会を立ち上げ、高齢者レクリエーションの提供、医療・介護職員への研修、誕生死を支えるボランティアなど、いのちの現場でのサポート活動を精力的に行っていらっしゃいます。
これほどまでにパワフルに軸を持って活動を続けていらっしゃる背景には、どんな志や想いがおありなのでしょうか。

葬儀の仕事に携わるようになったきっかけ。

もともと私は旅行代理店に勤めていましたが、結婚を機に主人が立ち上げたばかりの葬儀の経営にチャレンジすることになりました。
 
結婚相手が「葬儀社」ということで、親から反対されても仕方がないだろうなと思ったのですが、「人を送る仕事は大切な仕事だよ」と私たちを応援してくれたのです。
 
両親もそうですが、私も葬儀を仕事にすることに抵抗感は全くなかったですね。
というのも、同居していた曾祖母の「死」を通じて得た経験のお陰だと思っています。

曽祖母が見せてくれた死が活動の原点。

私が小6の時です。亡くなる4,5日前に家族の前で「私、もう少しで死ぬからね」と突然言い出しました。
 
88歳でしたが、介助もそう必要なく、普通に生活していました。ごはんも食べていたし、自分で歩き、日常生活に大きな支障はないと感じていました。
 
なのに突然「もうすぐ死ぬ」と言う。「おばあちゃん、何言ってるの?」という感じでしたね。曽祖母は私と兄に「また会えるからね。二人の頑張りをいつもみてるからね」と言い残しました。

曽祖母の言う通り、数日後には床に伏せ眠っている時間が多くなり、食事をしなくなりました。まもなく身体にも変化が現れました。
 
意識がだんだんと薄れてきて、息が不安定になり、大きな呼吸音がしてきましたが、最期はストンと穏やかな表情で亡くなりました。

かかりつけの医師より、往診の際に事前にこうした変化の説明を受けていました。
「おばあちゃんは、まったくえらくないよ(しんどくないよ)。心配しなくても大丈夫だから。何か処置をする方が苦しいからね」と言ってくれ、子供心にそうなんだ、と少し安心したのを覚えています。
 
まるで老木が枯れていくような自然な死に様でした。
今の時代はなかなか老衰という診断で、自宅に居ながら死ねないものです。

葬儀も自宅で行い、別れが寂しい中でも、とても心温まる時間を過ごすことができました。
 
自らの死を悟り、堂々と死んでいった曽祖母と、それを自然なことだからと受け入れていった周囲の人たち。そこには家族、親族、地域はもちろんですが、支えてくれた葬儀社の方のサポートも素晴らしく、それが小6の時に初めて体験した「死」でした。
 
初めて身内を看取ったこの印象が、死というものを身近にしてくれました。
それは、私がしている活動の原点なのかもしれません。

葬儀社は、介護や医療施設と利用者を新たに結びつけることができる。

介護の現場は、「生きること」の支援ですよね。
逆に言うとお亡くなりになった方への役割を失い、気持ちも関係も、そこでぷつっと切れてしまいがちなんです。

ケアマネージャーや介護福祉士の皆さんは、日々利用者に向き合い、目の前の支援を精いっぱいなさっています。
同じような1日の積み重ねがあり、明日も明後日も継続的に介護ケアが必要だという心づもりで付き合っている。

それがある時、お看取りの日がやってくるわけです。
どんなに関わりの深かった利用者さんであっても、亡くなるとそこで関係が終わってしまいます。
そうすると介護してきた人たちも寂しい気持ちになりますが、ご家族も一緒です。
今まで家族と一体となってケアしてくれていた人たちとの関係が切れることに動揺が走って、まるで突き放されたような気持ちを覚える家族もいます。
 
介護職の方は、そんな家族の雰囲気から無力感を感じたり、使命感が途絶えて不完全燃焼を覚えることがあります。

私たち葬儀社は、このようなご家族と介護職の方々を、改めて結びつけることできるんじゃないかと思っているんです。

無事にご葬儀を終えた後、葬儀社として施設へ報告に伺うようにしています。

個人情報には十分配慮した上で、どんなお見送りだったのか、ご家族のご様子はどうだったか、というところをお伝えします。
 
施設側は葬儀社に引き継ぐとそれ以降のことが分からないので、こうしたご報告を喜んでくれることが多いのです。
 
「好きだった肉じゃがを奥様が最期に作られて、ご家族皆さんで召し上がりながら、お見送りしました」とか「この施設の担当の○○さんには最期まで優しくしてもらって本当に良かった、とご家族が感謝されていましたよ」などと手書きのカードにして差し上げると、施設内で回覧してくださったり、担当だった介護スタッフに手渡してくださいます。
 

介護現場の方からすると当たり前にやっていることでも、ご家族は感謝されていますから、それを第三者としてお伝えすると「そんなことで喜んでくれていたんだ」という気付きが生まれますよね。

たとえば、遺影は施設で介護スタッフが撮影してくれた写真が使われることが多いんです。
 
晩年の写真というのは一般的に少なくなりますが、施設で過ごしていた方は、スタッフが施設での生活ぶりを時折撮影してくれていますから、自然な笑顔の写真が写っているんですよね。
  
だから、私は介護の現場の方には「利用者さんの笑顔の写真を1枚撮ってあげることができただけで、ご遺族の大きな支えになっていますよ」と伝えています。

そうすると、改めて自分たちの仕事に対する意義ややりがいを見出してくれますよね。
今日一日、利用者さんと一緒に過ごす尊さを実感していただきたいんです。

社会福祉士を取得して、これからやりたいこと。


地域包括ケアシステムの図式を変えたいと思っています。
厚生労働省は、高齢者を支えるためのシステムとして、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されることを目指しているわけですが、このサプライヤーに葬儀社は入っていないんです。図式として「生きるための支援」しか考えられていないんですね。

最期の準備(逝きる)を提供する機能が欠落しています。

一方で、対象となるお年寄りは、自分の最期を案じています。
特に、ある程度心豊かに人生を送ってきたお年寄りは、死に対する心の受け入れも進んでいて、冗談めかして「わたしはね、いつ死んでもいいの」なんて言いながら、自分の死に対する思いや希望を表現するケースが多いんですね。

たとえば「お葬式はやらなくてもいいけど、お骨はお父さんと一緒にしてほしい」とか「散骨してほしい」などと言われた時に、介護の世界の人はエンディングの専門家ではないので、正直受け答えに困ってしまうと思うんです。

それでも、心あるケアマネージャーは、寝る間を惜しんでインターネットで調べたり、実際に利用者の遺志を継いで、お骨を持って届けたりしているケースもあります。
それは契約外のことで、ボランティアでなさっているんですね。

そのお心は素晴らしいのだけど、それが続いては身が持たない。
インターネットの情報だけで動いてしまって、それが正解ではなかったということもある。
結局は燃え尽きて、介護の世界から離れてしまう人が多いんです。
実際に、ケアマネージャーの離職率が高まっていると問題になっています。

もしここにエンディング関係の専門家とのパイプがあったら、介護職の方はそこまで背負う必要はなくなります。

支える人を支えたい

私はエンディングに特化した社会福祉士(エンディングソーシャルワーカー)として、ケアマネージャーや介護福祉士などの専門職の方々に向けて、サポートができたらと思っています。

エンディングに関する情報提供や具体的な支援は任せて、と言いたい。それぞれの専門家が連携しあい、力をあわせた方が、最期の夢を叶えてあげられると思います。

また、納得のいく生前相談ができると人は安心感が出てくるので「さて、残された時間をどう生きようか」とよりよく生きることに意識が戻ってくるものです。

そうすると、他に抱えている問題も解決に向かって進んでいくこともあります。
 
自分の最期のイメージが出来たことで、例えば、家の売却だとか、残される人のこれからの生活だとか、そういうところに目がいくようになるんです。

「どう逝きたいか」は、「どう生きたいか」に繋がりますから。
介護や医療の人たちと、エンディング業界の人たちが連携していくことの意義はとても大きいと感じています。


子育てとの両立の中で思うこと。

4歳の女の子がいます。
仕事の性質上、家にいても24時間体制で電話を受けなくてはなりません。
なので、仕事の電話がかかってきたら、’’シー’’と手をやって、お仕事の電話だから静かにしようね、と促しています。
それは一般家庭にはないことなので、まだ幼い娘に強いることはごめんね、という気持ちになりますが、家業なので仕方がないですし、一生懸命に取り組んでいる姿勢を見せていきたいと思っています。
成長していく中で、葬儀や人の死に関わる仕事の大切さを理解してくれていったら嬉しいなと思っています。


Profile 
川上 恵美子氏

株式会社ファイング(エンディングプランナー) 
(一社)おかやまスマイルライフ協会(スマイルプランナー)
社会福祉士
一般社団法人グリーフサポート研究所認定 グリーフサポートバディ(GSB021)

葬儀の現場でご家族と過ごす中、最期の時間だけでなく 「最期の時間までをどう過ごすか」の重要性を考え グリーフサポートを軸にした「見守り・看取り・見送り」の ネットワーク作りを実施。 「支える人を支えたい」の想いで 現在ではより良く生きる為に必要なサポーターの輪を広げる為に 一般の方向けだけでなく、医療・介護従事者対象に幅広くセミナーを 各地で実施。

インタビューアーの視点

お話しを聞かせていただいて、川上さんの頭の中には、常に三者の視点があるように思いました。
逝こうとしている人と見送らなければならない人、そしてその場面を見守って支えていく人。
近江商人の言葉で三方よし、という言葉がありますが、同じように、死にゆくところに関わる三者がともに信頼で結ばれ、満足できることはなんだろうということを常に考えていらっしゃるのです。

その三者それぞれの視点に立ち、具体的に必要となる支援を続けていく根底には、グリーフサポートの考え方があるそうです。

グリーフに関する正しい知識があり、援助に対するスキルやマインドが備わっている川上さんだからこそできる活動がそこにはありました。

(書いた人:穴澤由紀)