【Ken’s Room】アメリカでグリーフにおけるスピリチュアルケアを学んでいます。

Ken's Room

こんにちは、ジーエスアイ代表の橋爪謙一郎です。
 
今回の【Ken’s Room】は、アメリカ コロラド州フォートコリンズからお届けします。
 
グリーフケアの第一人者であるアラン・D・ウォルフェルト博士(Alan D. Wolfelt, Ph.D)が主催する、センター・フォー・ロス&ライフ・トランジション(Center for Loss and Life Transition)に2年ぶりに学びに来ています。

ジーエスアイが提唱している「グリーフサポート」は、アラン博士からの学びから得たものがベースになっていますので、今日はアラン博士とセンター・フォー・ロス &ライフトランジションについてご紹介したいと思います。

Center for Loss & Life Transition

アラン博士との出会い


知っている人も多いかもしれませんが、彼との出会いのきっかけは、エンバーマーのライセンスを取得し、葬儀の仕事に必要なことを体系的に学ぶ「葬儀科学大学」に遡ります。

葬儀の仕事をする人材が、「グリーフサポート」の知識レベルを、ご遺族のために必要なレベルまでUPさせるためのクラスが4科目ありました。それらの授業担当、フィリス・クパロス先生はアランの授業を受けていて、アランの著書を教科書に採用していました。彼女と色々な話をしていた時に、「Ken、あなたは、グリーフサポートをするために生まれて来たんだよ。この学校の学びで終わらず、大学院にいって学びを深めたほうが良いよ。これは、あなたの天職なんだから」と僕に大学院で心理学を学ぶと同時にアランのセミナーを受けるようにと、強く勧められたのでした。

その時から、彼から直接学びたいという思いがありましたが、やっと、申し込みに必要な「自分自身の死別体験」、「喪失に関わる仕事の経験」、「なぜこの分野に興味を持ったか?」などについてのレポートを添えて申し込みを行うことができたのが、それから数か月経ってカリフォルニア州で、エンバーマーのライセンスを取得するために、2年間のインターンとして実務経験を積んでいる時でした。

ワークショップの講師である彼から学ぶことに加えて、受講生同士が、それぞれの経験や専門性、経験から出てくる話を共有する中から学び合うことも重要視していて、どのクラスで受講できるかは、申し込みをした後で、受講生のバランスを見て決められるのです。

Dr. Alan Wolfelt

継続して学び続けています。

日本に帰国後も、定期的に彼の元で学びを続けてきて、なんと今回で11講座目になりました。今は、提供されなくなってしまった講座もあるのですが、現在、彼が提供しているセミナーは13ありますので、あと2講座を残すだけとなりました。それぞれの講座は、4日間で約30時間。11講座では約300時間にも及びます。それだけの時間を彼との学びに費やして、学んできたことを誇りに思い、達成感を持つと同時に、一抹の寂しさを感じてしまいます。以前は、年間80日以上をホテルで過ごし、北米を中心にセミナーをしていたアランですが、そんな生活を卒業して、引退するというような話も出ていましたが、これからも自身のセンターでのセミナーに集中するということなので、まだまだ、彼からの学びは続けられそうです。一安心です。

今回、受講しているセミナーについて

さて、今回のセミナーについて書きますね。

今回のセミナーは、“Exploring Spiritual Dimensions of Death, Grief and Mourning”というタイトルがついていて、意訳をすると「死、グリーフ、モーニングのスピリチュアルな局面を探求する」というものです。

このセミナーは、彼自身が学部、修士号、博士号を取得するための学びを続ける中で、「グリーフケア」や「グリーフサポート」の分野から「スピリチュアル」の要素が抜けていることに気づきました。喪失を体験している人を理解し、支え、彼らが自分自身で向き合い、折り合いをつけていくきっかけを作ったり、助けとなったりする上で不可欠な要素である「スピリチュアルな視点」からの学びを提供したいということがきっかけで、創り上げられたものです。

そして、そのためか、今回のクラスは、このセミナーを一番受けたかったという人が本当に多かったです。受講生の職業などのバックグラウンドも多種多様ですが、その中で一番多かったのが、ホスピスでチャプレンとして働く人か、宗教者です。社会が変化し、多様性が認められる様になった今、一つの視点で全ての人の生老病死の苦しみに向き合えなくなってきており、これまでとは異なる接し方を求められていることが全世界で同時に起こっていることを実感しました。

現在、アメリカでは病院やホスピスを開設し、認可を受ける際にチャプレンがいることが必要条件になっています。パストラルカウンセリング(=スピリチュアルケア)を受けられることが患者の権利であり、当然のサービスとして受け入れられているアメリカでも、「スピリチュアル」な部分は、いまだに十分だとは言えないことが、1日目の午前中、僕を含めた34名の受講生の自己紹介、ならびに「なぜこの講座受講申し込みをして、何を学び取りたいか?」という話を共有しながら、確信に変わっていきました。

日本において「スピリチュアルケア」は、2004年に研究会が立ち上がり、2007年に学会が設立され、2011年の東日本大震災を契機に「臨床宗教師」の養成が始まったりしていますが、今回改めて「スピリチュアルケア」の本質について考えさせられる時間になる気がします。

遺族をはじめとする喪失体験者にスピリチュアルケアを提供する能力は、自分が提供する支援や寄り添う取り組みにおいて、ノンジャッジメンタルの能力、つまり一つの視点や自己の信条や信仰に基づく価値観や考え方を持ち込まず、向き合い、眺めることのできる能力ということができるのです。

これまでも「グリーフサポート」について伝える際に気をつけてきたことなのですが、死別を始めとする喪失を体験し、助けを必要としている人たちが、その体験で影響を受けた5つのエリア(※)において「安心」&「安全」を与えられた時に、自分らしく、オープンに、正直に「感じたこと、思ったこと、考えたこと、自分が体験していること」を表出できる様になるのだということを再確認しました。

しかし、現実は、関わり、支える人のバックグラウンドによって、「安心」&「安全」が提供されるエリアとされないエリアに偏りがあるように感じます。特にスピリチュアルの部分は、日本においては、包括的でホリスティックな視点に富んだスピリチュアルケアが必要な人にきちんとサポートが提供されるよう、今回の学びが重要な意味を持っていることを、初日のセミナーが終了した時点でひしひしと感じています。

帰国後、この学びを日本でも提供できるように、早く準備を進めることが必要だと感じると同時に、それを提供できた時のご遺族が受けるサポートの質が向上することを想像するだけで、今からワクワクしています。

※5つのエリア:①身体的、②認知的、③情緒的、④社会的、⑤スピリチュアル(精神的)

書いた人:橋爪謙一郎

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