自身の経験から、ペットロスに苦しむ飼い主へのグリーフサポートへ  

グリーフサポートバディ

 日本のペットの総数は犬705万3千頭、猫883万7千頭、合わせて1,589万頭。(*1)
近年のペットブームの中、ペットロスに苦しむ人もそれだけ増えているということになります。

「ペットと人の幸せ研究所」を主催する大河内りこさんは、グリーフサポートバディの資格を持ち、
ペットロスに苦しむ飼い主へのグリーフサポートも行っています。その活動の源にはご自身の経験がありました。 (*1)2022年、一般社団法人ペットフード協会調べ

アニマルコミュニケーションでペットロスを解消する

Q:大河内りこさんの活動について教えていただけますか?

大河内私は「ペットと人の幸せ研究所」、略して「ハピらぼ」というコミュニティを主催し、アニマルコミュニケーションというメソッドを提供しています。アニマルコミュニケーションは、簡単に言うと、動物と対話をする方法です。一般的にはスピリチュアルと言われている分野になるでしょうか。

飼い主の皆さんが知りたいこと、例えばよくあるのが、どうして吠えるの? どうして咬みつくの? どうしておトイレを失敗するの? 病気は苦しい? などですね。そんな、飼い主さんが知りたいことを、私たちアニマルコミュニケーターがペットに尋ねて回答をもらいます。そうして、発生している問題を解消するために、ペットと飼い主さんの間に入り、双方の誤解を理解へ導くためのお手伝いをさせていただいています。

Q:アニマルコミュニケーターの方が介在して、ペットの気持ちや行動の源を、クライアントにお伝えするみたいなイメージでよろしいでしょうか?

大河内:はい。それをアニマルコミュニケーションと呼んでいます。さらに、抽象度が高い話もあります。そのコがそのお宅にやってきた意味や、果たしているお役目を聞くこともします。今、飼っているコたちだけではなく、亡くなって、空にお返ししたコたちとのコミュニケーションもあり、それがペットロスの解消にもつながっていきます。

自分のワンコの重病がきっかけでアニマルコミュニケーターの道へ

Q:アニマルコミュニケーターになったきっかけを教えてください。

大河内:子供の頃から動物と話していたというアニマルコミュニケーターの方もいますが、私は全くそうではありません。実家が商家で食品を扱う仕事をしており、また私自身も喘息持ちで、ペットを飼わせてもらえませんでした。結婚して、子どもたちが犬を欲しがったので、初めてうちにワンコを迎えたのですが、このコ(小雪)がまあ、大変飼いにくいコで、喜びと同時にたくさんの心配を与えてくれました。

このコが6歳になった時、重病にかかりました。獣医さんからは「ちょっともう無理かな…」と匙を投げられましたが、私は諦めきれず、鍼灸や漢方系など三カ所も病院に通いながら、それまでに学んでいたマクロビオティックを始めとした自然療法の知識も取り入れて自宅看護をしました。そんなこんなでなんとか命を救うことはできたのですが、ふと我に返った時に、このコを助けることは本当によかったことなのだろうかという疑問がわいてきたのです。

「私の命と引き換えでもいいから助けてください」と、当時は獣医さんに必死で訴えていたのですが、本来なら、天にお返しする命だったのかもしれないのに、あの時に手放してあげた方がこのコは後遺症にも苦しまなかったのかもしれないのに、いけないことをしたのではないかという複雑な罪悪感が生まれたのです。このコが本当はどうしたかったのかを、猛烈に確かめたくなった。それにはアニマルコミュニケーションしかない、と思ったのです。

それで、アニマルコミュニケーションを学ぶ決意をし、大阪まで勉強に出かけました。そのスクールで、初めてうちのコとアニマルコミュニケーションで対話をしました。不思議なことに、うちのコの想いを聞いた後、3週間ほどで後遺症がすっかり治ってしまったのでした。話しただけで病気が治るってどういうこと? と、別世界に行ったような気持ちになり、私同様ペットの病気で悩んでいる飼い主さんにも役に立てるのではないか、と思ったのです。

そこから1年間、スクールに通い、2012年に独立して今に至ります。


グリーフサポートとの出会い

Q:りこさんがグリーフサポートと出会った経緯を教えてください。

大河内:私とグリーフサポートの出会いは、橋爪先生のセミナーです。
アニマルコミュニケーションの仕事を進めると同時に、いろいろなものを学んで仕事に活かしたいと思った私は、2016年から1年かけて、ヒプノセラピーを学びました。毎月東京に勉強に行っていたのですが、セラピストを集めたグリーフサポート講座を受講する機会に恵まれ、その時「あ、これはペットロスに有益な情報が得られる」と確信しました。

それまでも、ペットロスの悲嘆の中にいる方からたくさんの連絡がありました。お空のコとなんとか話がしたい、あの時のことをごめんねと謝りたい、お別れの時苦しかったよねと伝えたいなど、飼い主さんはいろいろな未完了の思いをお持ちです。それをアニマルコミュニケーターとしてお繋げしていく時に、もしグリーフサポートの知識が私にあれば、もっと的確なアドバイスができる、そしてグリーフの状態にある飼い主さんの心をもっと理解できるようになる。そうすればもっといいセラピーができると思ったのです。

そこからグリーフサポートの講座に参加するようになり、グリーフサポートバディの資格まで取得しました。

Q:グリーフサポートの知識がペットロスに活かせると思ったのはどんな点ですか?

大河内:習ったことで本当にそうだなと実感するのが、ペットロスの深い悩みがあっても、家族同士でも言えない、お友達にも話せないということ。本当の自分の心はなかなかオープンにできないとおっしゃる方が多いのです。なぜなら、もし理解されなかったら余計に傷つくからです。

自分ひとりだけがそういう閉じた状態にいると思い込んでいる。しかし悲しみの深い時、人という生き物はみんなそうなるのだとお話すると、そこでまず安心する。橋爪先生から習った知識をシェアすることで、ペットロスに悩む方を救えるし、私自身が発する言葉も、根拠があるので力強くなっていると思います。やはり知識がバックボーンにちゃんとあるのと、なんとなく感覚だけでやるのとでは全然違います。

対面、オンラインと両方でセッションを行なっていますが、サロンにお越しになった時に、もう泣けて泣けて、言葉が出ない方もいらっしゃいます。自分を責める方、ずっと表情がない方もいらっしゃいます。そんなふうに苦しんでいた方達が、自分を責める必要がない、ペットたちは本当に何があっても飼い主と共にいる存在だということを理解する。

すると、「ごめんねごめんね」と言い続けてきた方が、「うちに来てくれてありがとう」と。「うちに来なかったらもっと長生きできたかもしれないと思ったけど、うちに来るべくしてきたんですね」と。長生きのコ、短いコ、それぞれに、例えば短いなら短いなりにちゃんと意味があって、うちに来てくれた。それを皆さん納得されます。頭の理解ではなく、ちゃんと腑に落としてくれる。

その後、機会をいただき橋爪先生と一緒に、ペットロスのサポートのためのコンテンツを作成しました。実は、それを提供し始めてから、うちのコは旅立ちました。まるで自分が本番を迎えるときに、辛くならないようにしてくれたと感じます。そのような意味で、自分自身もペットロスから本当に救われました。

クライアント自身の生き方を支えるサポートへ

Q:ペットロスに苦しむクライアントの年代や性別には特徴がありますか?

大河内:年代や性別に関係なくいろいろですが、特に「ハピらぼ」は40代後半から60代の女性が中心ですね。日々追われている時にはそこまで感じなかったことが、子供の巣立ちなどで生活の余裕や時間のゆとりができたときに、ふと、悲しみが現れることもあります。また、そうしたゆとりができたからこそ、子供代わりに迎えたペットも、やはりやがて手元から旅立ってしまいます。すると、また、心にぽっかりと穴が開いたような状態に陥ってしまう方もいらっしゃいます。

そういう方は、どちらかというとお世話好きな方が多いですね。お世話することで、自分の自己価値を感じるタイプの方は、お世話の対象がなくなってしまうと自分のアイデンティティを失ってしまう。そこにペットロスの入り口がある。だから、最近はペットとのコミュニケーションよりも、飼い主さん自身のセラピー中心になることも多いですね。

Q:飼い主さん自身の抱えている課題ということでしょうか?

大河内:そうです。私のアニマルコミュニケーションは、ペットの問題行動や病気はサインと捉えます。サインですから、それらの問題は、何かを知らせてくれているわけです。何を知らせてくれているのか、大元の根っこを探します。たとえば「ワンコがすごい吠えるんです」、という悩みにはどこにその根っこがあるのだろう、というふうに探っていくと、飼い主さんの心の部分に行きつきます。そこで、飼い主さんのセラピーをしていくとその子が落ち着いてくるのです。ペットと飼い主は、すべて繋がっている状態なのです。

Q:今後の目標を教えていただけますか?

大河内:グリーフサポートに視点をおけば、先ほども言ったようにペットロスになってからセラピーをするというよりも、予防として、あらかじめそのような知識を皆様に知ってもらう活動をしていきたいと思います。

もう少し大きな視点を持てば、人々の意識に変革を起こして、たおやかな地球を創造するというのがあります。ひとりひとりが愛に満ちた行動をとることでそういう社会ができるはず。そこに向けて貢献して行くのが私の目標です。

インタビュアー:上坂美穂/(株)目白台書房


【大河内りこ】一般社団法人ペットと人の幸せ研究所代表理事
        一般社団法人グリーフサポート研究所 認定 グリーフサポートバディ
        日本催眠学会会員/認定心理士

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