今回は、セミナーの内容というよりも、アランの作り上げた研修の場について書いてみました。
2003年9月21日。
コロラド州デンバー国際空港にワクワクした気持ちと不安な気持ちの両方を抱えながら到着しました。ひどい時差ボケの頭で、フォートコリンズ行きの空港バスを探し、何とか乗車したことを覚えています。
約2時間、バスに揺られて到着したものの、久しぶりに使った英語の発音が悪かったのか、チェックインの際に同名の違うホテルで下車させられたことがわかりました。最終的には本当の宿泊先が、同系列のホテルだったので、お迎えに来てくれることになったのですが、「フォートコリンズマリオットホテル」になんとかたどり着き、チェックインした僕にやっと1枚の「ウェルカムカード」が渡されました。チェックインできるまでは、ずっとドキドキしていたことを改めて思い出します。
智チェックインの際に僕が受け取った「ウェルカムカード」は、グリーフサポートを学びに来る人が、アウェイ感を持つことを少しでもなくし、かつ、明日から共に学びましょうという気持ちが込められた、Center for Lossからのものでした。
そして、裏側には、明日から5日間(今は、4日間)を共に学ぶ仲間のプロフィールが書かれていて、どんな人と一緒に過ごすのか、予め知ることができる配慮がなされていたのです。
教えてもらえる内容も、アランの教え方も本当に素晴らしいのですが、それだけでなく、ここまでやるのかと驚かされたのは、受講生が安心して学びに集中し、セルフケアの時間にもなる様に細部まで配慮が行き届いていた所です。
例えば、いきなり勉強から始まるのではなく、朝食とランチは、研修施設内で用意されていて、他の受講生と話をしながら、友好を深めた上で始まります。
その安心感があるからこそ、深いかつ深刻な内容が共有できる雰囲気が熟成されていたのです。そして、毎朝よっぽどの理由がない限り、宿泊しているホテルにアラン自身が受講生を迎えに来てくれて、一人一人と挨拶をしてくれました。
著書を読んだりして想像していた人と、実際に会ってみたら違う人だったということは、意外に頻繁にあることですが、アランは、その想像を遥かに超えたフレンドリーな人柄で、この人からたくさんの事を学び取りたいと一瞬で魅了されてしまったのです。
前回書いたように、その当時は、 『悲嘆支援スキル総合トレーニング“Comprehensive Bereavement Skills Training”』と言うカリキュラムを、最初に受講することが義務付けられていたので、受講申し込み時に、自分の死別体験について小論文を書くことが必要で、その内容によって自分に合った受講のグループを決めてくれるのでした。結局、アメリカ滞在中には受講がかなわず、帰国後セミナーを受ける為だけに再渡米をすることになりました。
受講の際には、自分自身の死別体験に関連性の深いもの、この学びを通じて他の受講生と共有したいもの、この学びの間をより心地よい場にするための「アイスブレイク」に使う「好きなCD」、「詩」などを持ってくるように言われました。朝食をとった後、研修を始める時に気持ちを研修に集中させると同時に研修と自分自身との経験とつなげると言う二つの目的を同時に果たすためにこの様な事も意識して実行していたことを今振り返ると、細部にまで意識をしていたと思うと本当に気づかされる事ばかりでした。
“Center for Loss and Life Transition”は、ロッキー山脈のまさに入口に位置しています。建物の設計にもアランのこだわりが至る所に発揮されていました。この場は、研修の場としてだけでなく、カウンセリングを行う場としても使われている場だったので、空間づくりにも色々と工夫がされていました。
研修期間中も学びの場としてだけでなく、日頃他の人の為に日々努力を続け、その過程で、心が疲れたり、傷を負ったり、燃え尽きかけているような受講生が、自分の軸や自分の本質を取り戻すために、本当の意味での最高の環境でした。アランが小さいころに父親と自動車でアメリカを旅行した時、「将来、生まれ故郷のインディアナ州じゃなく、コロラド州に住むんだ」と夢見ていた場所にそのセンターは建っていました。
アランが設計した”Center For Loss and Life Transition”は、カウンセリング、研修施設、そして彼が執筆を行う、正にグリーフサポートの中心、 “センター”でした。
さらに、センターの隣には、彼の自宅も隣接されていて、僕自身にとっては本当に夢の様な場所でした。将来僕も日本にこの様な場所を作り上げたいと理想にしている場所です。
その当時、5日間のセミナーの内1日は、研修終了後にアランの家でホームパーティが催されていて、本当に一緒に学んでいる受講生とアランの関係が深くなる場がしっかりと設けられていました。それは、現在のジーエスアイで行っているセミナーに踏襲されていて、セミナー期間中に懇親会の時間をとり、それぞれが取り組んでいる事、こだわっている事などを、自由に話す事ができる場があれば、それだけで、人は考えたり、対話したりするものです。また、「同じ釜の飯を食う」と言った感覚で同じ方向に向かっている人との仲間意識も生まれ、そしてそれがきっかけとなって行動に移すことまでもが、自然と起こるようになると思います。
-つづく-
【過去記事】
詳しい話は、著書の「エンバーマー」を読んでいただけると嬉しいです。
▼書籍紹介リンク
http://www.griefsupport.co.jp/about/#p3