大切な方を亡くした方への言葉がけ、迷ったことはありませんか?

あなゆきnote

ジーエスアイ スタッフの穴澤です。

この「グリーフサポートラボ」は、死別体験をして苦しんでいる人の支援をしたい方に向けて、グリーフに関する情報や、支援する時にお役立ていただけるヒントをお届けしたい、というコンセプトで始まりました。

 
読んでくださっている方は、葬儀社をはじめとするエンディング産業に関わっていらっしゃる方や、医療・介護・心理系等の援助職の方が多いようなのですが、本来は、どのような業種であっても、仕事を通じてご遺族に関わる機会はあると思います。

 
目の前のお客様が、実は大切な存在を亡くされたことで、内面では苦しい思いを抱えていらっしゃるということが分かった時、あなたのお仕事の中でどのような配慮ができるでしょうか。


今日は二つのケースをみていきたいと思います。


たとえば、あなたが客室乗務員で、機内に大切な人の遺骨を機内に持ち込んで搭乗されたお客様がいらしたら、どのようなことができそうですか?
 

以前に、SNSで話題になっていたエピソードをご紹介します。

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もともと横浜に住んでいた男性が、奥様の遺骨を故郷の佐賀県へ納骨をするために羽田空港から九州へ向かうため、飛行機に遺骨を持ち込んだそうです。

搭乗手続きの際にも、持ち込む荷物が遺骨であることは伝えており、遺骨を入れたバッグを上の棚に入れて、男性は席につきました。
 
すると一人の客室乗務員が近づいて、声をかけてきました。
 

「隣の席を空けております。お連れ様はどちらですか?」 

乗務員からこう言われた男性は『きっと搭乗手続きのやり取りが機内にも伝わっていたのだろう』と思い、「上の棚です」と答えました。 

すると乗務員はバッグを下ろして隣の席へ起き、シートベルトを締めてくれたのです。 

そしてその後も「お連れ様の分です」と言って、飲み物を出したりと、まるで隣に奥さんがいるかのように対応をしてくれたのです。 

その対応に男性も嬉しかったようで「最後に2人で良い旅行ができた」と語っていたそうです。 

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神対応! ですよね。
この男性がどれだけ安らいだか、想像に難くありません。


これはおそらく搭乗手続きのスタッフとの情報連携がしっかりとされており、ご遺骨と一緒にお乗りになるお客様のために何ができるのかを考えた結果、このようなサービスに繋がったのだと思います。

このような対応は、ケースによっては過剰になってしまう場合もあるでしょう。
 
その時の条件や目の前のお客様の様子など、五感を使いながらすべてを網羅して判断しなければならないと思います。

 
ですから、マニュアルにするのは危険ですし、会社としてどこまで各スタッフに権限を持たされているのかによっても違ってきますが、最終的には、その人のコミュニケーション能力やホスピタリティ、センスが反映されていくのだと思います。

AIではできないことですし、人間の総合力が試される、と言ってもいいかもしれません。



 

一方で、知らず知らずにお客様を傷つけている場合もあるかもしれません。

死産を経験された女性からこんなエピソードを聞かせていただいたことがあります。
 

その女性は突然のお産のトラブルにより、緊急帝王切開でご出産されたものの、残念ながら赤ちゃんは息絶えていて、おなかから出てきたときにはすでに亡くなっていました。


妊娠経過はすこぶる順調であり、決してリスクの高いお産ではありませんでした。


いよいよ陣痛を迎えて、明日か明後日には赤ちゃんに会えるよ、と言われて臨んだ出産だったのに、うぶ声も聞けず、対面できた時には冷たくなった状態でした。


産後の入院中は、他の病室から赤ちゃんの泣き声が聞こえる中、母乳を止める薬を飲んで、布団を被って泣き続けていたそうです。

退院後、家に帰ると、用意していたベビーベッドや、水通ししたベビー服が目について、赤ちゃんと一緒にここで生活を始めるはずだったのに……という思いがさらに彼女を苦しくさせました。

肉体的にも精神的にもなかなか回復できずに、家でぼんやり横になっている日々が続きました。

 
人にも会いたくない。
特に妊娠していたことを知っている人と会ったらなんと言えばいいのだろう、どんな言葉をかけられるのだろう、そう思うだけで恐怖感が募り、とても誰かと会話をする気分にはなれませんでした。
 

しばらく経った時「このままじゃいけないな、元気になりたいな」と思った時に、ふと、エステに行ってみようかな、と思ったそうです。


結婚が決まり、ブライダルエステに通っていた時のことを思い出したのです。

「丁寧にボディケアをしてもらって、心地よかったし、肌がどんどん整っていくことで自信を持ってウエディングドレスを着ることができた」

「あの時のように自信を取り戻して、また外に堂々と出られる自分になりたい」

そう思って、以前にお世話になったエステティシャンのところに行ったのだそうです。

ブライダルエステ以来だったので、エステティシャンは妊娠していたことも死産したことも知りません。
詳しいことを言わずにすむ、というのも後押しになったのです。


でも、実際にボディケアが始まると、エステティシャンは帝王切開の傷を見つけ、「ご出産されたのですか?」と聞きました。


出産したことは事実なので、最初は、そうです、と答えましたが、「いつ出産されたんですか? 」「授乳中ですか?」「赤ちゃんは今誰かに預けているんですか?」とどんどん問いかけられ、しかたなく死産したことを告げました。

エステティシャンは、お産したんだから赤ちゃんがいるのが当たり前、と思っていたのかもしれません。

施術を提供するうえでも、出産後どのくらい時間が経っているのか、授乳中ではないのか、そういうことも聞きたかったんだと思います。

でも、出産にまつわる矢継ぎ早の質問が、彼女を追い詰めてしまいました。

しかも、その後に、エスティシャンはこういったのだそうです。
「お体を冷やしていませんでしたか?」

この一言に彼女は深く傷つきました。
原因を追究されるような問いかけをされたことによって、そのあともやっぱり自分が悪かったのではないか、と自責の念が消えなかったそうです。

悲しみの淵から抜け出したいと勇気をもってエステの扉を開いたのに、結局は人と話すこと自体が怖くなり、またしばらく家に引きこもってしまったそうです。


たとえ言った本人に悪気がなくても、何気ない一言が、相手を深く傷つけてしまったり、困惑させてしまうことってありますよね。


あなたにも、死別体験で苦しみから抜け出せないままでいらっしゃるお客様がいらっしゃるかもしれません。
 

適切な対応ができるように、自分にはどんなことができそうか、どんな言葉がけが適切なのか、一度考えてみることはとても良いことだと思います。
 
グリーフ(悲嘆)の状態にいらっしゃる人に対しての接客というのは、グリーフの知識とコミュニケーション能力が必要です。
 
大切な存在を亡くし、苦しさを抱え込んでいる時というのは、防衛反応も高くなっていて、いつもよりも敏感で傷つきやすくなっていることが多いのです。
 
そんな状態のお客様に喜んでいただいたり、ご満足いただける対応ができる人なら、他のお客様に対する接客も自信を持って行えると思います。


グリーフサポートの学びは、すべての人間関係に活かしていくことができます。

興味がある方は、業種問わず、ぜひ一緒に学んでいきましょう。


(書いた人:穴澤由紀)

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