世界が求めている「セレブラント」とは?~日本の葬儀を変える新しい職業~

葬祭サービス

ジーエスアイの穴澤です。
 
皆さんは「セレブラント」という職業を知っていますか?

私は初めて聞いた時、その響きから、セレブの人向けのサービスか何かなのかな~と思ったのですが(←単純)、「セレブラント」というのは、儀式の専門家のことなんだそうです。
 
日本では聞きなれない名前ですが、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなど、英語圏を中心に葬儀や結婚式をはじめとしたさまざまな儀式を司る専門家として、セレブラントと呼ばれる人達が活躍の場を広げているそうです。
 
オーストラリアでは、政府機関に登録しているマリッジセレブラントが結婚執行の役割を持っているので、結婚が決まったら、まずセレブラント探しをしないといけないのだとか。

葬儀の分野においては、専門のフューネラルセレブラントがおり、オーストラリア政府の発表によると、全オーストラリアの葬儀の60%以上がセレブラントによって行われているそうです。
 
アメリカにおいても、同様に全体の60%の葬儀にセレブラントが関わっていると言われており、40代の転職する職業BEST5にも入っているそうです。


私のイメージでは、英語圏の国では、結婚や葬儀は宗教者によって行われていることが一般的だと思っていましたので、今世界中に広がっているという、このセレブラントという職業は、いったいどんな役割を果たしているのか気になります。


数年前にアメリカでフューネラルセレブラントの認定を受けている、株式会社ジーエスアイ代表の橋爪にセレブラントについて詳しく聞いてみることにしました。

株式会社ジーエスアイ代表 橋爪謙一郎

Q: セレブラントというのは、いつどこで生まれたのでしょうか?

橋爪:オーストラリアに起源があります。
以前、オーストラリアでは、結婚式も葬儀も教会で行うこと以外は認められていませんでした。
しかし、それではキリスト教以外の宗教を持つ人や無宗教の人達にとっては、人生における大切な儀式を執り行うことが出来ません。
1973年、教会に属していない人の要望を受けて、オーストラリア政府が結婚の司祭認定制度を確立し、教会だけでなく、他の場所でも結婚式を行うことが認められるようになりました。
その時に、牧師さん以外で儀式を執行できる人を作らなければならない、ということで生まれたのがセレブラントのはじまりです。
その後、同じ課題を持っていたニュージーランドも導入し、その後アメリカにも広がっていきました。
セレブラントの活躍は、今じわじわと世界中で広がっているムーブメントであり、ひとつの職業として確立されつつあると言っていいでしょう。

Q:そういう背景があったのですね。日本ですでにセレブラントとして活動している人はいますか?

橋爪:近い活動をされている方々がいらっしゃるかもしれませんが、今現在、欧米と同じ意味合いでセレブラントとして活動している方は、国内にはおそらくいないと思います。
フューネラルセレブラントして認定されたのは、僕がはじめての日本人だと思います。

Q:海外で行われている、セレブラントによる葬儀というのは、どういうものなのですか?

一言で言うと、セレブラントは、亡くなった方やご家族の、その人らしさやライフスタイルを反映させた儀式をオーダーメイドで作りあげていくんです。
セレブラントは英語圏から広がってきていますが、それは教会での伝統的な儀式を選ばない人が増えてきているという背景があります。
さまざまな信義を持つ人、文化背景の全く違う配偶者を持つ人など、宗教の枠に留まらない儀式の需要があります。

「セレブラント」は、さまざまなバックグラウンドや志向を持つ人々に対応できるよう、儀式に対するさまざまなアイディアを提案し、形にすることができるんです。
じっくりと遺族と話し合い、思い出を集めながら、その人らしさを追求した儀式を一から作っていきます。とてもクリエイティブな仕事ですよね。

Q:日本における葬儀でも求められているような気がします。

橋爪: 今、日本では、「葬儀って本当に必要なのかなぁ」とか「葬儀をすることに意味があるのかなぁ」と葬儀の価値について分からなくなっている人が多くなっているように思うんですね。
 
そもそも葬儀をする意味を考えた時、次の3つのニーズがあるはずです。
ひとつは、思い出を分かち合って、心の整理をつけていく時間を持つこと。
次に、儀式という形式の中で、現実を受け止め、心にけじめをつけていく時間を持つこと。
 
そして、一番大切なのは、死別によって湧き上がってくるさまざまな思いや感情を豊かに表現し、支えあう時間を持つこと。
この3つのニーズが満たされてこそ、価値のある葬儀だと言えるのだと思います。
 
でも日本において、このような葬儀が実現できているか、というと僕には疑問が残ります。
日本人はもともと人前での感情表現というものを控える傾向がありますし、伝統的な葬儀の形式に則り、滞りなく進めていくものだという認識があるかもしれません。
 
これからの葬儀は、形式にこだわるのではなく、心の中に負った傷を癒すきっかけとなる儀式~たとえば、思い出を分かち合えたり、感情を素直に出せて、それを誰かが受け止めてくれて支えあうようなひとときを過ごす~というような、葬儀の中でどんな体験をするのかという部分がより求められていくような気がしています。
 
いわゆるお仕着せの、形骸化した葬儀には満足していないけれども、かといって意義深い葬儀にするために何をしたらいいのか分からない、と思っている人達も多いと思います。
セレブラントは、その満たされていないニーズに答えていくことができる存在なんですね。

Q:ジーエスアイでは、今後、日本では初となるセレブラントの育成を始めますが、セレブラントが各地で活躍していくようになると、日本の葬儀が変わっていくかもしれませんね。

橋爪: そうですね。
葬儀というのは、大切な人を亡くした人にとって、気持ちと折り合いをつけていくためには欠かせない要素だと思っています。
 
意義深い葬儀は、大切な人を亡くしたことによって見失った自分を取り戻す助けとなる一方で、痛みは伴いますが、死別以前の人生から死別後の人生へと移行する助けともなるのです。

ご遺族の心の整理に寄り添い、その人らしい葬儀を一緒に作り上げていくのがセレブラントの仕事ですが、それは、遺された方々の悲しみを受け止め、寄り添っていくことになり、結果的にそのプロセスがグリーフサポートに繋がっていきます。

人がひとりでグリーフを抱えることのない世の中にしていくために、セレブラントの担う役割は大きいと感じています。

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皆さん、セレブラントについて少しイメージが湧いてきましたでしょうか?
 
意義深い葬儀を体験することで、グリーフの旅を安全に航行するための道標となっていく……。
セレブラントの担う役割は、単に儀式を司るだけではないのだと分かり、ますます興味深くなりました。

今後もセレブラントについて、グリーフサポートラボでもお伝えしていきますのでご興味のある方はチェックくださいね。

(書いた人:穴澤由紀)

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