[きよみのみかた-5]小室哲哉不倫疑惑騒動から、支える仕事をしている私が感じたこと

きよみのみかた

もう、ずいぶん前のことのようになっていますが、
今回は、1月に小室哲哉さんが、週刊文春の不倫疑惑報道を受けて記者会見を開き、
その場で引退することを発表されたことについて、
グリーフサポートの視点で考えた、きよみのみかた。

前職の同僚ならだれもが知っているくらい、私は、TM NETWORKが「SELF CONTOROL」や「GET WILD」などのヒットで全盛期の頃から、小室さんの大ファンです。
追っかけに近いくらい、東京近郊のLIVEには、何回も何回も足を運んだものです。


私が小室さんの大ファンだからと言う部分を差し引いても、
私は今回の騒動に違和感を感じた一人です。

本来なら、男女の関係ではないのであれば、「事実とは違う。不倫はしていない」と、
言い張っても良かったはず。

他の不倫関連の会見と比べて考えても、KEIKさんの詳しい病状や、
自分自身の男性機能のことまで赤裸々に明らかにしなくとも、
今回はなんとかやり過ごすことはできたのではないかと思うのです。


それでも、ああして自分の弱みを告白し、
元々60歳になる時には引退すると決めていたにもかかわらず、
1年以上も早く音楽活動を引退するまでに至ったことには、小室さんが極度のワーカホリック状態にあったことも要因の1つなのではないかと思います。

この騒動で、彼が不倫をしていたのかと言う点については、
私は夫婦間で判断することだと思うので、
第三者がとやかく言うことではないし、ましてやここでコメントするつもりでもなく、
今日は、小室さんが大切な人を支える立場であったことから、
グリーフサポートの視点で感じたことをお話ししたいと思います。


小室さんの当時の状況を考えた時、
現在、高次脳障害を抱える妻・KEIKOさんの介護と、小室さん自身の肝臓疾患、
それに加えて、日に日に思うように作品を創り上げることができない苦悩など、
多くの苦しみが重なっているにもかかわらず、小室さんには『仕事を休んだらすべてが終わり』
と言うような切迫感があった状態だったのかもしれないなと思います。

くも膜下出血によって、脳障害を抱えることになったKEIKOさんは、
結婚した頃とは人が変わってしまったような状態で、小室さんにとっては本来の
KEIKOさんを失ったのと同じ。

KEIKOさんは高次脳障害によって、globe全盛期のように歌を歌うことが
好きではなくなってしまったのだと言います。カラオケでも1曲丸々歌うことができず、
飽きてしまうのだそうです。

死別とは違って実在はしているものの、目の前にいる人は、
結婚した頃とは別人のようで、妻を失ったも同然の喪失感。

自分自身も、昨年C型肝炎の疑いで入院。
健康な自身の身体が失われていくという喪失感。

ストレスからくる自律神経の乱れで耳鳴りがしているとのことでしたので、
出せば出すだけヒットを飛ばし、何百万枚も売り上げていた頃のようには
仕事ができなくなった喪失感もあったかもしれない…。


そもそも小室さんは、感情を人前で表に出すことは少なかったと言います。

globeとして1stアルバムが売上400万枚を達成してレコード大賞をもらった時も、
1人シャワーを浴びながら、人知れずガッツポーズをして嬉し涙を流していたというくらい。

特に詐欺事件を起こした後は、自分の慢心、おごりから引き起こしたことなのだと、
かなり、その部分には気を使っていたと聞きました。

 
結婚した頃は、色んな気持ちを、唯一自分らしくいられるKEIKOさんに話し、
癒してもらえたのだと思いますが、今はそれも叶わないばかりか、
誰かに自分の気持ち(弱音や愚痴)を話すことなど一切できなくなったのだと思います。

KEIKOさんに気持ちを理解してもらえることができず、不倫相手とされた、今では唯一心を許せる看護師のAさんに自分の話を聞いてもらい、ごく普通の大人の会話ができたり、
たまには添い寝をしてもらったのかもしれないその時間は、
たとえ点滴をしながらでも、本当に心安らぐひとときだったのだろうと簡単に想像できます。


誰かを支えている人を支える誰かがいなければ、燃え尽きになってしまうのは、当然のことです。

詐欺事件で執行猶予付きとはいえ、有罪判決を受けたことなどで心労が祟ったことが
KEIKOさんがくも膜下出血を起こした要因の1つであると、小室さんは考えていたと思われるので、
何があっても小室さんが彼女を支えてなくてはいけない、
愚痴を言うことなど許されることではないと、1人で沢山の痛みを抱え込み、
あんな状態になるまで頑張ってしまったのだと想像します。

(もちろん、自業自得と言う厳しい意見もあるとは思います)


ジーエスアイのグリーフサポートセミナーでも、そのためのカリキュラムがあるくらい、
誰かを支える人は、自分のケアをしっかり行う必要があることを認識しなければなりません。
誰かを支える人は、まず第一に、自分を大切にする必要があります。


そして、自分一人で抱え込むのではなく、自分を支えてくれる誰かを探しておくことも重要なこと。

誰かを支え、ケアする人は、自分の精神的な電池の充電することを忘れてはいけないし、
自分自身にも、感じた悲しみや苦しみを、話をとことん聴いて受け止めてくれる誰かが必要で、
それについて自分が力不足だとか、恥ずかしく感じるべきことではないのです。

2016年12月、小室さんが、日本テレビ系列で毎週金曜日に放送されている
「アナザースカイ」
と言う番組で、かつて住んでいたロンドンのアパートを訪ねた時のこと。

KEIKOさんとロンドンでデートした秘話を披露していましたが、
その中でも、KEIKOさんはもうそのことを覚えていないと話していました。

その時の彼は、本当に淋しそうでした。

番組を見た時から、私は小室さんが詐欺事件に加えて、KEIKOさんに対するグリーフも抱えているんだなと思っていたのですが、これほどひどいことになっているとは夢にも思っていませんでした。

先ほども書きましたが、グリーフサポートにおいて、ご遺族を支えている人は、
その人に寄り添い、支えることを通じて、ご遺族の様々な感情を抱え込み、
「燃え尽き(バーンアウト)」と言われる状態になることがあります。

介護している大切な人が、いつ元気になるかわからない、
もしかしたらもう元気になることはないというような、
支えることに希望が見えないような状況にあれば、それは大切な人を亡くした場合と同じように、
グリーフの状態になると言えると思います。

小室さんは、まさにこの状態だったと思うのです。

グリーフの状態なら、自分の感情を押さえ込んだ状態が続くと、悲しみの感情だけでなく、
他の喜びや楽しみといった感情までも、表現できなくなってしまいます。

そんな状態では、音楽を創るようなクリエイティブなことなどが思うようにできるはずもなく、
才能が枯渇したと感じて悩んでいたというエピソードは、当然のことに思えます。


誰かを支える人は、燃え尽きるのではなく、自分らしく能力を発揮するために、
セルフケアを習慣づける必要があります。

さらに、そのセルフケアは、単なるストレス解消やリラクゼーションだけでは十分ではなく、
「自分自身を知ること」によって、いつでも自分らしく支えることができるようにする必要があるのです。

小室さんは、ある意味で大切な人を失い、グリーフの状態にあるにもかかわらず、
大切な人を、1人で支え続けて、とうとう燃え尽きてしまったと言うことだと思います。

もし、小室さんが一人で抱え込まずに、誰かに感じていることを話すことができて、
時々は自分に戻れる時間を持つことができたなら、
ミュージシャンとしての”アイデンティティ”を見失わず、
そもそも体調も崩さなかったかもしれないし、さらには誰かに依存することもなかったかもしれません。

以前、この「きよみのみかた」でも、宇多田ヒカルさんのアルバムについて
触れたことがありましたが、彼女のように、自分の感情を表現することに
音楽を使うことができていたら、才能ある人が引退に追い込まれることもなかったのかと思うと
やるせない気持ちでいっぱいになりましたし、サポートする人を支える仕組みは本当に大事だと、
今回の件で改めて感じました。

今、小室さんのように病気の家族を支えている人は、世の中にたくさんいると思います。

最後に、普段ジーエスアイのグリーフサポートセミナーのセルフケアのカリキュラム
でも行なっている、燃え尽きの兆候がないかを見極めるための10個のチェック項目が
ありますので、皆さんも、これを使って自分の状態を確認してみてください。

《燃え尽きの兆候に気づくための10項目》

*過去一年間の自分の生活を振り返り、以下の項目にいくつ当てはまるか考えてみてください。

1. いつも疲労困憊で、気力も常に足りていないような感じがする

2. 家でも職場でも、周囲にいる人に対してイライラしたり、我慢しきれなかったり、
  怒りやすく感じることが増えている

3. 同僚や友人に対して距離を感じたり、皮肉っぽくなることが増えている

4. 頭痛・胃痛・腰痛や、なかなか治らない風邪のような、身体の不調を訴えることが 
  多くなった

5. 気持ちが落ち込んだり、突然気分が変わったりすることが多い

6. いつも忙しいわりに、何もやり遂げられていないように感じたり、
  達成感をかんじられない。

7. 集中することや、記憶力に関して困難を感じることが増えた

8. 自分の周りで困っている人全てを助けるのは、自分であると思っている

9. 自分がどんなに努力をしても、満足を感じることができない

10. 自分が役に立てることなど、もう無いように感じる

該当する項目の数が多いほど、燃え尽きの状態へと向かっている可能性があります。

その場合は、信頼できる誰かに自分の気持ちを聞いてもらうか、
休日をとったり、仕事の量を減らしてリセットするなど、
何かしらの対策を取った方が良いかもしれません。

ジーエスアイのグリーフサポートセミナーを受講して、グリーフと言う状態について学び、
自分の状況を認識することも、1つの方法ですよ。

いつまでも良い状態で、自分らしく支える仕事を続けられるよう、
大切な家族を支えることができるよう
自分自身を見失わなわず、自分自身を過信せず、気を付けていただきたいなと思います。

(書いた人:橋爪清美)

死別体験をされた方をサポートしたい方へ

ジーエスアイでは、死別に苦しむ人達を支える時に大切なポイントをお伝えしています。
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