心理セラピストで婚活カウンセラーの顔も持つ、あなざわゆきです。
「グリーフサポートバディの資格を活かしながら、婚活カウンセラーをしている」と話すと、ピンとこない方も多いかもしれません。しかし、私はグリーフの知識が婚活のサポートに欠かせないと感じています。
実際に結婚相談所を運営し、結婚を望む独身者のお手伝いをしていると、グリーフが原因で婚活がうまく進まない方が一定数いらっしゃいます。その理由を探ると、条件や容姿など表面的な課題よりも、その方が経験してきた喪失や傷心体験がブレーキとなっていることが多いと感じます。
特に配偶者との死別を経験された方が婚活に挑む際、ご本人は気持ちの整理がついていると考えて活動を始めることが多いですが、新しい出会いを通じて、心の奥にしまったはずの痛みや喪失感が噴出することも少なくありません。特に、長く深い愛情で結ばれていた相手を失った場合、再婚への一歩を踏み出すのは容易ではありません。
今回は、奥様を病気で亡くしたAさんのエピソードを通して、死別後のグリーフが再婚の壁になることや、周囲がどのようにサポートできるかについて考えてみたいと思います。
(個人が特定されないよう、人物やストーリーについて、事実から少し設定を変えています)
大手企業に勤めるエリート男性の物語
Aさんは40代後半。
温厚な性格で、落ち着いた口調で穏やかにお話される知的な方です。
5年前に最愛の奥様を亡くされ、食欲不振や睡眠不足が続く中、1年間メンタルクリニックで治療やカウンセリングを受けて少しずつ元気を取り戻しました。
「まだ人生の時間がある」と再婚を望むようになり、婚活を始める決意を固めました。
婚活がスタートすると、多くの女性とお見合いを重ね、交際も順調に進んでいたのですが、一人の女性と交際が深まり真剣交際に進む段階で、Aさんは先に進むことを躊躇し始めました。お相手の女性について「僕にはもったいないほどの素敵な人」と話し、相性の良さも感じている様子ですが、一歩踏み出す勇気が出ないといいます。理性では「新しいパートナーと家庭を持つことが幸せに繋がる」と理解しているものの、感情面で無意識の抵抗感が現れていたのです。
グリーフがもたらす影響
Aさんが抱える「決断できない」という状況は、実はグリーフが深く関係しています。死別のグリーフは、たとえ年月が経っても完全に癒えるものではなく、その影響がふとした時に現れることがあるのです。5年という月日が経過し、表面的には元気を取り戻したように見えても、奥様との思い出や、かつての幸せな日々が心の奥深くに刻まれていることで、再婚に対する無意識の抵抗感が現れることがあります。
グリーフには「未完了の感情」が多く含まれています。例えば、心の奥底にしまい込まれた悲しみ、あるいは「もう少し何かできたのではないか」「自分だけが幸せになっていいのか」というような罪悪感が、知らず知らずのうちに新しい関係を築くことへのブレーキとなっていることがあるのです。
また、新しいパートナーと同居するようになったら、亡くなった奥様をどう位置付けたらいいのか、そんな不安も出てきます。
お墓参りや法事はどうしたらいいのか、遺品は持ち続けていていいのだろうか、二人で使っていた家具をそのまま使っていいだろうか、そんな風に、新しいパートナーに配慮して、故人との関係性も見直さなければいけないのではと思うと、それも心の負担になっていきます。
Aさんはしばらく悩んでいましたが、再婚の意思を固めることができないまま交際終了となりました。
その後、「どんな良い出会いがあっても今の自分では進めない」とおっしゃって、いったん婚活を休止し、ご自身の中に残っているグリーフと向き合っていらっしゃいます。
周囲ができるサポート
配偶者を亡くされた方の婚活では、婚活は残っていたグリーフが表に出てきやすいということを、サポートする側は認識しておく必要があります。
グリーフの影響で、一般的な人よりも、メンタルが不安定になったり、心の中でハードルがどんどん高くなっていく場合があるからです。 具体的にどんなところに気を付けたらよいでしょうか。
1)過去と未来がいったりきたりする時期があることを理解する
婚活は未来の幸せのための行動ですが、過去を断ち切りたいわけではなく、むしろ個人との思い出を大切にしたいと感じている方が多いです。複雑な心境の中で婚活を始めることが多いため、気持ちが過去と未来の間を行き来しやすい状態だということをサポート側も理解し、ゆっくりと心の整理ができるよう支援しましょう。
2)再婚へのプレッシャーを与えない
本人が再婚の意思をほのめかし、実際にお相手探しをはじめたとしても、周りの人が再婚について個人的な意見や励ましを述べないようにすることが賢明でしょう。
周りから「新しい出発をするべきだよね」「再婚した方が良いと思うよ」「婚活頑張って」というような前向きな助言や意見が時にプレッシャーになることがあります。
婚活をはじめてから、グリーフが再び強くなるということもありますから、その時その時の本人の気持ちや意思を尊重してあげましょう。
3)グリーフと共に生きていく前提で支える
新たなパートナーを得たとしても、過去に経験した死別の悲しみは、完全に消えるものではありませんし、消そう消そうと頑張る必要もありません。
それよりも、グリーフと共存する覚悟を持つほうが、よりよく生きることに繋がっていくはずです。
周囲のサポートする人も、その人の悲しみがすべて消え去ったのではなく、悲しみと折り合いをつけながら前を向いて生きているという視点を忘れないでいると良いと思います。
「悲しみを乗り越えなくてもいいのだ」「いろいろな思いや感情があるのが当然だ」という姿勢で見守ってあげることが大きな支えになるはずです。
まとめ
グリーフと婚活は一見無関係に見えますが、実は密接に関わりがあります。グリーフの状態でいることで、幸せになる許可を無意識に出せずにいたり、自信が持てずに決断力が乏しくなったりと、知らず知らずに自分でブレーキをかけてしまうことがあるからです。
死別だけでなく、離婚や失職といった喪失体験も婚活に影響を与えることがありますから、広義に捉えていくと、婚活が難航している多くのケースでグリーフが隠れているのではないかと思います。
心にブレーキがかかって婚活がうまくいかない時には、その人の中にグリーフが隠れていないか、それを探っていくことも適切なサポートになります。
(株)ジーエスアイでは、グリーフの基礎を体系的に学び、様々な分野で活躍できるグリーフサポートのプロフェッショナルの育成や、「グリーフサポートバディ」という資格認定、並びにその後の継続教育まで、多彩なプログラムを提供しています。
どんな方でも、自分らしく支えられるようにグリーフの知識やコミュニケーションスキルをわかりやすくお伝えしています。
詳しくはこちらをご覧ください。
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