お片付けとグリーフ~おはなのオハナし5~

お片付けとグリーフ

三寒四温を繰り返しながらの春の入り口、今週末でもう4月ですね。

4月からの新生活に向けて、お引っ越しをされた方、される方が多い時期かと思います。

引っ越すために必ずすることになる、お片付け。

理由が引っ越しではなくても、人生のターニングポイントには「断捨離」と言われるようなお片付けをすることがあるのではないでしょうか。

片付けの作業自体や、部屋の様子が心に与える影響というのが実はとても大きい、ということを、私が心理を学ぶにあたって、そしてグリーフを学ぶにあたって強く実感しています。

「部屋は心の鏡」という言い方もありますが、お部屋の片付き具合がその人の心の状態を反映しているという考え方があるのをご存知な方もおられるかと思います。

実はそうした、片付けができない、片付けができなくなった、という人の背景に、喪失体験とそのグリーフが表れていることが多いのです。特に、大切な人を亡くしたあとにその故人の遺した物をどうするか、ということを様々な想いを抱きながら悩むご遺族は少なくないと思います。

"捨てる"前に、大切にしたいこと

片付けがなかなかできない人から出る言葉の多くが「物が捨てられない」ではないかと思うのですが、なぜ捨てられないのか、というところを確かめることは、なかなかできていない気がします。

「断捨離」という言葉を聞くと、どうしても「捨てる」ことが先行してしまい、物があること自体を否定的に受け取ってしまうことがあるかもしれません。それはあなたにとって必要なものか、心地よい気持ちになるものなのか、という「確認」があってこそ、その人にとって意味のある断捨離になるはず、と私は考えています。

有名な”こんまり”さんこと近藤麻理恵さんは「手にした瞬間に”ときめく”かどうか」を残す・残さないの基準にしておられますね。ただ、その「捨てる」ことへのプレッシャーのせいで余計に片付けに手を付けることができない、という人も少なくないかもしれません。

特に、片付けができない人たちが例えば遺品をどうするべきかと悩むような「喪失と向き合う過程」にある時、「ただ捨てる」ことによってその喪失による悲しみに折り合いをつけることが難しくなってしまうことを、頭においておきたいところです。

大切な人との「大切な思い出」の存在は、喪失を受け止め、そしてそこから感じている気持ちとの折り合いをつけてゆく中で、とても重要なものなのです。大切な人を亡くしたとき、その人のいない生活をしていくにあたって、片付けなくては、と気持ちを追い立てられることがあるかもしれませんが、そこはぜひあせらず、少しずつ取り組んでいっていただきたいところです。

思い出の品を手にして大切な人に思いを馳せ、時にはご家族やご友人とその思い出を語る時間を持ちながら、これからその人を思い出す時に手元に置いておきたい物、それがあれば大切な人をすぐに愛しく思い出すことができると感じられる物、を残すことをしてもよいのではないでしょうか?

「物が捨てられない」の反対に、「捨ててしまいたい」と思うこともあるかもしれません。ジーエスアイの発行している小冊子「大切な人を亡くしたとき」にもそのことについて書いてあるのですが、その”物”を見ると亡くした人を思い起こされてつらい気持ちになってしまうから捨てたい、と思っている人がいるでしょう。

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もしかしたら、周りの人から「亡くなった人の物をまだ持っているの?」だったり「片付けて欲しい」と言われてしまったことがきっかけで、捨てなければならない、と思っている人もいるかもしれません。

本当に大切なものだからこそ気持ちを揺さぶられてしまい、それに耐えきれなくて捨ててしまいたくなっているのなら、その時こそ、その思い出の品を通してしっかりとなくなった人に思いを馳せることが必要な時のでは、と思います。実際に捨ててしまう前に、一旦目に見えない場所に移してみるなどして、今いちど、大切な人への想いを振り返れるようになるまでの時間をとってみてほしいのです。

片付けと結び付けるならば、お片付けのこんまりさんが片付けは「衣類→本→書類→小物→思い出の物」の順番で、とおっしゃっているように、思い出の品に取りかかるのは最後で構わない、と、ご自身をゆるしてあげて下さい。

そして、もしお一人でやろうとしてつらいときには、ぜひ、お友達や信頼できる人に助けを求めてください。

もし大切な人を亡くした人で遺品をはじめ片付けで困っている人が近くにおられたら、捨ててしまうことよりも、しっかりと大切な人とのつながりを確かめた上で残すか残さないかの選択をできるように、納得がいくまで時間をとって取り組めるよう、そして、その思い出の品を通して感じていることを想いのままに表現してもらえるようサポートしていくのが、グリーフサポートになるのではないかと思います。

片付けが私に教えてくれたこと

かくいう私自身、実は片付けが大の苦手でして、家にはたいへん物が多く、整理もできないため物が散乱してしまい、部屋をいわゆる「スッキリとした状態」にするのがとても難しい生活をしておりました。私が経験した、「喪失を認め受け入れる作業」となった片付けのお話を書かせて頂きます。

子供の時から片付けは苦手でしたが、ずっと「これではいかん」と思ってはいました。そんなところに昨年、「心理と片付け」に同時に働きかけてくれるセミナーに出会いました。

そこでは、自分の心の状態、特に「無意識」が部屋の状態にどう作用しているかに気づき、そして自分が将来「望む姿」である時には自分の部屋はどうなっているか?を想像しながら取捨選択をして、実際に部屋を片付けるためのスキルを片付けのプロの指導と共に身に付けていく、というプロセスを経験しました。

なぜ私が片付けが苦手だったか?を考えた時に、パッと思い当たる理由としては

・子供の頃から母親の体調が悪く、家が片付いていない状態が普通だった
・一つのことに集中するのが難しく、片付けの途中で気が散ってしまって終わらない
・生来の好奇心の強さから色んなものに興味があって思わず買ってしまう
・親が「子どものために」と買ってきたものを断れず、そして処分できずにいた
・(無意識に)物を買ってもらうことで親の愛情を確認していた

といったことが挙げられるのですが、片付けセミナーに参加して「無意識の声」を聞いてみて初めてやっと、ハッと気づいたことがあります。

それは、『無意識に「一人」の状態を作らないようにしていた』、ということでした。一人暮らしだったはずの私が無意識にやってしまっていたことは、家族で過ごしていたような空間をキープすることだったのです。

つまりは、自分が一人だという現実や、実家から離れる喪失と、離婚による喪失を受け止められていなかった、ということ。

私は実家暮らしから一人暮らしを経験せずに結婚し、離婚をしてから現在までは一人暮らしなのですが、実家から出る時に沢山の食器や家具を持ち出し、離婚をするときもそのうちの多くを持ち出し、と、減らさずに持ったままでいました。

例えば冷蔵庫はファミリーサイズの大きさ。親から貰うものはたとえ使わなくても「悪いから」と捨てずにいて、収納スペースの半分は、もらい物。

その環境は自分が無意識に「家族と居る状態」をキープしようとしてしまっていたのだ、と気づいてから、片付けそして自分の生き方自体に対する意識が大きく変わったのを覚えています。

喪失からの悲しみに折り合いをつけるプロセスでまず必要なのが、「喪失を受け入れ、認めること」であるというのをグリーフサポートセミナーで学ぶのですが、まさにそれだ!という体験でした。

ここで私が想像したのは、大切な人とともに暮らした家にそのまま住んでいるならばなおさら、まだ喪失を受け止められていないタイミングで家の中の風景が変わってしまうような片付けをしてしまうとしたら、またさらに大きな喪失感を感じることになるのかもしれない、ということでした。

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家=自分の心 

心理面からの片付けができなかった理由を考えると、そもそも結婚をする前、子供の時からなぜそうなっていたかというと、心を映す鏡としての私の部屋は、世にいう「自己肯定感の低さ」を表わしていたと思います。

「部屋が片付いていない」=「人を呼べない」=「自分のプライベートに人を入り込ませたくない」=「自分には魅力がない」

そして

「片付いていない部屋を見るのがイヤ&片付けるのがイヤで常に外に出かけている」=「家が安心できる場所ではない」=「自分が育った家が安心できる場所ではなかった」

といった、自分自身や家という存在への否定が、私の部屋には表れていました。

「片付けができない自分」をずーっと嫌だと思いながらも長年続けてこられたのは、例えば「自分のプライベートに人を入り込ませたくない」といった自分の欲求、つまり「そのままでいたい」欲求があったからこそ。そのままでいることで「得ていたこと」があったからなのです。

グリーフサポートを学んでから「自分らしく生きる」ことに取り組み続けている私が、より自分らしく安心して生きるにはどうしていけばよいのかを、「片付け」を通して教えてもらうことが出来ました。

私にとって居心地の良い空間は結局「物が無い」ことではなく、「好きなものが目に入る」空間だということも自覚したため、雑誌に載るようなスッキリ&オシャレな空間ではありませんが、以前よりずっと家に居る時の安心感が増しました。

さらには、どこに住んでいたらもっと人生を楽しめるかを考え、またこれもすぐに「引き寄せの法則」と言えそうな部屋に出逢うことができ、昨年の終わり頃に引っ越しをしました。まだ完了はしていませんが、友人たちの助けを借りながらだんだんと、自分にとって安心できる家、人を気軽に呼べる家になってきています。

グリーフサポートに絶対必要なセルフケアの基礎である「家」を、やっと安心安全な場所にすることが出来た気がします。

春なのに、春だから。

読んでくださっている皆さんも、この春に片付けをしようとする時にはぜひ、ただ物を捨てるだけではなく、ご自分にとって「大切なものとはなにか?」「安心安全な場所はどんな場所か?」を今一度考える機会を持ってから始めていただければと願っております。

春は別れと出会いの季節。知らず知らずのうちに喪失感が心身に影響しているかも?と感じる時期です。もしあの人が生きていたら、と思いを巡らすことも多いかもしれません。

せわしない時期ではありますが、お疲れを感じた時には、心身がリラックスできるような、ゆったりと過ごす時間を持てるよう心がけながらお過ごしくださいね。

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