[きよみのみかた-11]おしゃべりも大事

第11回目となる[きよみのみかた]は、支える人はおしゃべりも大事、ということについて。

冒頭から、「え?」と言われそうな言葉を並べてしまいました。

いつも、「まずは相手の話を聞くこと」と何度も何度も言っているのに、なんで?と思われるかもしれませんね。

もちろん、グリーフサポートにおいて、ご遺族の話を聞く時は、1にも2にも相手の話を遮らずに最後まで聞くことである、と言うのは間違いありません。

今日、お伝えしたいのは、支える人も自分のことを話す時間が必要だという話。

 

自分自身、グリーフサポートを学び始めて間もなく10年になりますが、グリーフサポートの考え方は、前回の[きよみのみかた10]でも書いたように、自分の生活の中でも使っていることもあって、私がプライベートで誰かとコミュニケーションをとるときにも、常に相手に対して話を聞く側の立ち位置に入っている、ということに最近気づきました。

自分が話をしたくて相手に声をかけたとしても、いざ話が始まると聞き役になっていることが多いと言うことなのです。

そして、もう1つ気づいたことが、ペンを使って日記を書くと言うことを12年間していなかったということ。

つまりは、本当の自分の気持ちや思っていることを、話すことであろうが文章を書くことであろうが、とにかく何も表現をしていないということなのです。

ことの発端は、会社で下期のキックオフミーティングをしていた時のこと。

まだスタッフの人数も少ないことや、諸々の事情があって私が司会を担当します。
本来は、司会進行をしながら報告等に対して意見を言ったり判断をしたりすること自体がおかしいのですが、今日はこの点には触れずにおきます。(笑)

 

実は私は人前で話をすることに、極端に苦手意識があるため、社内のミーティングでも常に緊張しています。ですから、順調に会が進行している時はよかったのですが、その日は準備不足等もあって、予想外の展開になってしまった時に、言葉にできない感情が湧き上ってきて、うまく自分の考えがまとめられなくなってしまったのです。

時間が経ってからその時のことを振り返ってみると、そもそも司会進行することと、スタッフからの報告に対して自分の考えを伝えることは、思考回路が違いますから、想定外の状況が起きてうまくその思考を切り替えられず、思考が固まり、頭の中がプチパニックになってしまっていたのではないかと思うのです。

前職、前々職の頃にこのような状態になることは全くありませんでしたから、どうしてそうなってしまったのかと、少し自分のことを振り返ってみました。

すると、次の2つのことが原因になっているのではないかという考えに至りました。


1つは、文章で表現する機会がなくなったこと。

ちょうど私が今の仕事を始めたのは、次男の産休が終ってからで、今から14年前になります。育児はしていましたが、会社にはまだスタッフが少なく時間もあったので、毎日手書きで日記をつけていました。字を書くことも嫌いではありませんでした。

しかし、自社のHPを作ったり、自分たちの商品を宣伝するために文章をパソコンで作るようになると、文章のコピペや入れ替えが楽になってきたので、最近では思うままに打ち込んでから文章を整える方法を取ることも増えてきました。そのやり方は仕事上効率もよく、段々慣れてくると、逆にその方法を極めることに邁進していた気がします。

漢字がわからなくても、Googleで検索してそのままコピペしてしまうので、1回使ったくらいでは覚えていないものも多く、昔に比べると覚えが悪くなったのは書かないからかもしれないとも思います。もちろん年もあるけど...(笑)

そして、三男が生まれたと同時に仕事の時間もさらに増えていきましたので、プライベートの時間もなくなり、いつの間にか日記も書かなくなってしまい、結局1日の行動を振り返ったり自分の気持ちを外に表現する機会がなくなっていきました。

Facebookの登場で、結構投稿しているじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今では繋がっている友達も公私入り乱れていますので、公的には言えない個人的な気持ちを自分の心の中で湧き上った状態のままで表現することはできなくなりました。

中学生のころから自分の気持ちは日記に書いて整理してきた私ですが、今思えば、当時は意識的に感情を外に出そうとしてそうしてきたわけではありませんが、「こんなこと誰にも言えない」とか、「こんな話誰も聞いてくれないよな」などとは考えずに、ただ思うままにノートに書き記していたように思います。

PCは、頭に浮かんだことをどんどん入力していくので、文字の出力が頭の回転についていくことができて、紙に書くよりもスピードが速く効率がいいのかもしれません。

しかし、感情を表に出すと言うことにおいては、早いことが良いわけではないと思います。

ここまでは書いて表現することについて書いてきましたが、一方でもう1つの原因、話すことについても触れておきます。

冒頭にも書いた通り、まずは誰かと話すときも、私はまず、相手の話を聞いてから自分の話をするという順番で会話をすることが多いので、場合によっては相手の話を聞いただけで、時間が無くなり、「たくさん話を聞いてくれてありがとう」と言って別れる...と言う悲しい結末になったことも結構あります。

また、余計なことは言わない、相手によっては言いたいことも我慢する、そんな状態が続くと、自分の心の奥にあることはだんだん言わなくなり、全てを話すことができない場面も増えてきました。

また仕事がら、ご遺族とお話しする時には、安心で安全な場を作るために感覚を研ぎ澄まして、その場に不安や違和感を感じていないかと直感で感じ取り、言葉にする前に行動に移すことを心がけてきました。

それが、日々の生活の中でも、家族に対しても同じようにすることが増えてきました。

こうして、良い悪いではなく、気持ちを言葉で表現しないという選択肢を取ることが増えて、結果として自分の考えをまとめて話す機会は激減していってしまったのです。

前職以前は、特に意識しているわけではなく、ランチの時間に会社や取引先の愚痴を友達と話したり、夜飲みに行って話したりしていましたので、自然と自分のことをしゃべって言葉にする機会が多くあったのだと思います。



グリーフサポートとしてだけでなく、私と同じように話を聞く側に立つことが多いにもかかわらず、忙しくてなかなかおしゃべりもできないというような人は、疑似的なグリーフの状態にある可能性があるのです。

喪失体験によって、心のフタが閉まって自分らしく気持ちを表現できなくなったわけではありませんが、話す機会がなくなると言うことで、結果として心のフタが閉まってグリーフに陥っているのと同じ状態になってしまうのです。

自分で喪失体験をしたとは思っていないので、意識してフタを開けようとも思いませんし、フタを開けて気持ちを吐き出す必要性も感じません。

グリーフサポートの考え方を理解して下さっている方は、支える人も相手の感情によって自分が影響されないように、セルフケアを習慣にして、自分自身を整えることが重要だと良く知っていると思います。

でも、この場合は、誰かの感情に左右されているわけではないので、セルフケアが必要な状態であることもわからない人が多いと思われます。

そこで、今回のテーマでもある、「支える人はおしゃべりも大事」ということになってくるのです。

特に女性で、誰かと話をするときは聞き役に回り、1人事務仕事をするときは黙々と仕事をこなすような状況にある方は、自分のことは後回しにする方が多いと思います。

すると、普段の生活の中でも自分が考えたこと、湧き上がってきた気持などは後回しにして、他のことを優先してしまう方が多いと思うので、日記などをペンで紙に書く作業をすることで、思考のスピードもゆっくりになり、気持ちを言葉で表しやすくなると思われます。

また、たわいのないおしゃべりの中で、自分のことも話すように心がけ、場合によってはカウンセリングを受けるなどして、自分の考えていることを口に出す時間を取ることが必要だと思います。

喪失体験によるものでなくても、人には日々の生活の中湧き上がってくる感情はあります。

自分は、ご遺族の感情を引きずることはないと思う人も、自分自身の感情は湧いてきます。それが良い物とか悪いものとか言うことは関係なく、溜まっているものは外に出した方がいいと言うことなのです。

それによって、自分自身のパフォーマンスが向上し、結果としてご遺族を始めとする自分が支えている人にとっても良い影響を及ぼすものと思うのです。

かつては主婦の井戸端会議と言われ、今は女子会と名前が変わっているかもしれませんが、そういった場を確保することは、自然の流れだったのかもしれません。

是非、意識して自分の気持ちと言葉をつなぐ時間を作ってみてください。